シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない



今日は、事務所でレッスンをしていた。仕事はあまり入ってこないから、こうしてメンバーと鏡に写る自分を見ながら、ダンスレッスンをしているのだ。トレーナーや講師がひっきりなしに教えてくれる。汗が額に滲んで、頭が真っ白になるまでレッスンしながらも、女に遊ばれた怒りを押し殺していた。もう、簡単に恋愛なんてしたくない。
「じゃあ休憩」
汗を拭いてドリンクを飲んだ。
昨日は久実ちゃんの手術日だったはずだ。成功したのだろうか……。

廊下へ出て、久実ちゃんのお母さんに手術の結果がどうだったか電話をした。
『わざわざありがとうございます。無事、成功しました。このまま元気になってくれるといいんですけどね』
「じゃあもう再発の心配はないんですか?」
『……いえ、なんとも』
「そうなんですか」
『このまま元気に過ごせる人もいますし、また手術しなければいけない人もいるんですって。久実の生きる力を信じるしかないですね』
久実ちゃんならきっと大丈夫だと俺は信じていた。
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