シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
それから俺は病院に何度も通った。
そのたびに久実ちゃんは笑顔で対応してくれて、明るく手術の痛みの話など聞かせてくれた。
妹がもう一人増えた感覚で、俺は久実ちゃんを心から可愛いと思っていた。中学に入る前に退院出来た久実ちゃん。
今日は、お祝いを持って自宅まで遊びに行く。夕食をご馳走してくれるらしい。最近免許を取った俺は車で向かっていた。
久実ちゃんは都内のマンションに住んでいた。高級住宅街ではない普通の建物だった。
玄関の前に立ってチャイムを鳴らすと久実ちゃんが出てきた。満面の笑みを向けている。ツインテールの髪の毛はポニーテールに変わっていて、元気良さそうだ。
「赤坂さん、ようこそ!」
「お邪魔します」
中に入るとお母さんがエプロン姿でキッチンから出てきてくれる。
「わざわざありがとうございます」
「いえ。お邪魔します」
お父さんが近づいてきた。
普通のサラリーマンと言う感じのお父さんは話し方も優しくていい人オーラが出ている。
久実ちゃんは、一人娘で大事に育ててもらっている印象を受けた。
お母さんは手料理を振る舞ってくれて、お父さんも何度も感謝の言葉を伝えてくれて温かい家庭だと思う。いつか自分もこんな風に結婚して笑顔が耐えない家庭を作りたい。
久実ちゃんにプレゼントを手渡した。
「赤坂さん、ありがとうございます」
「中学に入るんだから、ちゃんと勉強するんだぞ。じゃないと、俺みたいになるぞ」
「はーい」
笑いが起きる。
俺と久実ちゃんは本当の兄と妹のようだった。本当にいい子だし、病と戦っているなんて思えない強さがあって、俺は見習おうと思っていた。
彼女のような前向きにとらえて行くことが出来れば、どんなこともいい方向に行くのではないかと思えた。