シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「そういう奴が一番スキャンダル起こしそうだな」と大樹は笑っている。
大樹が惚れている子ってどんな子なのだろう。
どんなことがあっても、メンバーと結束して頑張ろうと誓った。
自分たちだけが幸せになるのではなく、応援してくれる人を裏切らないために。
「じゃあ、仕事あるから俺行くわ」
立ち上がった俺は、大樹のマンションを出た。
車で運転して次の仕事場へ向かう。カーラジオからは俺らの曲が流れていた。
出掛けても家にいても自分のポスターや映像を見ることが多くて不思議な気持ちだった。
人生はどんな風に変わって行くのかわからない。
夕方からの仕事は、大手出版社の女性向け雑誌のインタビューが入っている。どこの雑誌でも恋愛観を聞かれて困るのだ。俺の恋愛観は自分でもよく分かっていなかった。
一度事務所に行ってマネージャーも同伴をする。
出版社に到着するとロビーで迎えてくれる。色んな人に持ち上げられていると感覚が麻痺してくる気がした。
俺に対して「よろしくお願いします」とスーツを着た女性が深く頭を下げてくる。俺は最近後頭部ばかり見ている気がしていた。
マネージャーとインタビュアーが名刺交換をする。出版社の来客室まで案内された。
ソファーに座るとお茶を出されて早速インタビューが行われる。若い女性が担当で笑顔を向けてくる。カメラマンもスタンバイしていた。
「では、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
早速、シャッター音が鳴る。
「赤坂さんはお休みの日は何をされているんですか?」
「音楽を聞いたり、ドライブをしたりしています。あとは……病院へ行っています」
「病院に……ですか?」
「ええ。まだ売れてない頃にファンレターをくれたお子さんがいて……お見舞いに行ったりしています」
「偉いですね。素晴らしいです」
「別に偉くないです。逆に生き方を学んだ気がしますね」
俺は久実ちゃんを利用するつもりはなかったが、売れ始めているからと事務所から言えと言われたのだ。拒否したがそうであればもう会いに行くなと言われてしまい、従うしかなかった。
「そうですか。続いて好きな女性のタイプを教えてください」
こういうのは苦痛でならない。好きな女性のタイプなんて別にない。俺はこの質問をされるたびに梨紗子に遊ばれたことを思い出す。女なんて何を考えているのかわからない。
「一途な方がタイプですね」
梨紗子を思い出しつつ、無難なことを言う。
「どんな雰囲気の方が好きですか?」
「…………」
しつこいからイラッとしてつい睨むと「女性の興味があるところなので、詳しく聞かせてください。こちらもお仕事なので」と苦笑いされてしまった。
「話が合う人……ですかね」
心を落ち着けて仕事を続ける。小さなことでイライラしてしまうなんて、相当ストレスが溜まっているのかもしれない。
インタビューを終えてビルを出ると、外は暗くなっていた。
まだ仕事は終わらない。次はバラエティー番組の収録がある。
車の中でマネージャーに怒られる。
「インタビュー中にイライラしないでくださいよ」と。