シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない


久実side

数学の時間。
窓際の席の私はぼうっと外を見ていた。天気が良い。さわやかな青空が広がっている7月。
私は……いつまで生きることが出来るのだろうか……。
高校へ行って、大学へ行って、仕事をして、結婚をして、赤ちゃんを産んで……。そんな平凡な夢は叶うのだろうか。
私は心臓病を発症し今は投薬治療をしている。入退院の繰り返しだ。お母さんはパートに出ているし、生活も苦しくなっているのは私のせいなのではと思っている。
中学3年生になってからは比較的体調がいい。無理な運動は出来ないけど、なんとか暮らしている。
高校へは進学するつもりだけど、勉強する価値はあるのかな……。
赤坂さんも頑張っているから、めげずに頑張るしかないか。私のことを雑誌で話してくれたのは、嬉しかった。赤坂さんからは、いつも勇気をもらっている。本当にファンになって良かった。忙しそうで……なかなか会えないけど、ファンとしてあまり欲張りになっちゃいけない。陰ながら応援しようと思っている。

昼休みになり、親友の朋代が近づいてくる。ショートカットで運動が得意な女の子でいつも仲良くしてくれていた。
塩分が少なめのお弁当を食べている。
COLORメンバーである赤坂さんと交流があることは、朋代にも言っていない。今じゃ大人気者であるCOLOR。私に会いに来てくれることを言うとサインしてっていっぱい言われそうだから。赤坂さんに迷惑は掛けたくなかった。
「夏休みも受験勉強だよね。めんどいけど、久実と同じ高校行きたいから頑張る」
「私も」
「久実は頭いいからいいじゃん」
「入院中やることなくて勉強ばかりしてたからねぇ」
「偉い! 私だったら漫画ばっかり読んでいると思う! マジ偉いわ」
明るくて朋代といると楽しくなる。機会があれば、朋代には赤坂さんのことを話そうかなって思っていた。
おかずを食べつつ話していると、後ろの席から恋愛話が聞こえてきた。

「サッカー部のキャプテンってさ、めっちゃかっこいいよねぇー」
「でも、あいつキスしてたよ。2年生のくせに」
「マジでー」
どんなにかっこいい人を見ても、なかなか赤坂さんに勝てる人はいない。そのせいかわからないけど、人を好きになったことはなかった。
というか、こんな体だから恋愛は諦めている。
手を繋いで歩いたり、デートをしたり憧れはあるけれど。実際には無理だろうから、変な希望は持たないことにする。
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