シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「人が多い所だと落ち着いて食事できないから、個室がある所でいい?」
「はい」
赤坂さんがこんな風に気を使ってくれるのが、すごく嬉しくて。
とても贅沢な時間に思える。
それと同時に赤坂さんが人目を気にしている事実を知って、ますます遠い存在になった気もしていた。私にとってはお兄ちゃんのような存在だけど、赤坂さんはアイドル。
車が走り出す。軽快な音楽が流れていた。
「久実ちゃんって、めっちゃ可愛いねぇ」と舞さんが気さくに話しかけてくれる。
「舞さんこそ……赤坂さんに似ていて綺麗な顔してる」
そんな他愛のない話をしながら車はどんどん進んでいた。連れて来てくれたのは横浜のホテル。景色が良くて、私にはまだまだ早い気がした。
注文する時、赤坂さんは「塩分を控えめにしてください」とさり気なく気を使ってくれた。
洋風のコースだったけど、すごく美味しかった。
食事を終えると少しドライブをして、家まで送り届けてくれた。車が見えなくなるまで手を振っていた。
舞ちゃんとも仲良くなれたかな。楽しい時間をプレゼントしてくれてありがとう。
夏のある日。
会いに来てくれた赤坂は、元気がなかった。
私の部屋で二人きりで、お話をしていたけれど笑顔がぎこちない。
何かあったのだろうか。