シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「おはようございます」
「おはよう。初瀬、これ、頼まれてくれる?」
「はい。わかりました」
「よろしく頼んだぞ」

出社すると、すぐに仕事を頼んでくる杉野マネージャーは今日もスーツを着こなしている。颯爽とした姿も素敵だ。デキる男って感じ。
「なんか、杉野マネージャーって美羽のこと、お気に入りだよねー」
千奈津が呟いた。何を言っているのだ。仕事だからでしょ。と、言い返そうと思ったのに先日の言葉を思い出して、言葉に詰まってしまった。

――可愛いなって想った子しか連れてこない隠れ家的な場所なんだ。

「ん? なんかあったの? 怪しい」
千奈津は探偵のように目を細めてくる。まるで謎解きをしようとしているみたい。
「そ、そんなことないよ」
「でも、ちょっといいかもって思ってるでしょ?仕事もできるし男前。人気もあるし。それに、お似合いだよ」
「えっ」
大くんと離れ離れになってから、男性なんか目に入らなかった。でも、杉野マネージャーは少しだけ男の人だと意識している。
それはきっと、両親が私に結婚を勧めてくるからだろう。
もう過去は忘れて、新たな人生を歩んでもいいんじゃないかと母は言っているのだ。そんな簡単に運命の人には出会えないよ。
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