シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
東京から沖縄へのフライトはあっという間で、杉野マネージャーは途中から眠ってくれたから良かったけど、私は緊張で全く眠ることができなかった。
時間がないから急ぎ足で歩いてモノレールに乗る。
景色は流れダイナミックな木々が見えてきた。すると、すぐに建物がいっぱい現れた。
「やっぱり、沖縄って暑いな」
「はい」
「かき氷食いたいね」
どこまでも杉野マネージャーはのんきなのだ。
仕事にも慣れているし緊張していないのだろうな。
「早く終わったら、かき氷喰いに行かないか? テレビで見たんだよ。ジャンボマンゴーかき氷。うまそー」
「は、はい」
食べ物のことを考えている余裕なんてない。吐きそうになる。
目的駅について降りると、すぐ近くにホテルがあった。
チェックインを済ませて荷物を部屋に置いて……『はな』の押し花しおりを出して、ジャケットの内ポケットに入れた。一人じゃない。大丈夫。呪文のように心の中で唱えて部屋を出た。
押さえておいた個室に向かう。
中に入るとふかふかのソファーとテーブルがあった。白とブルーを基調としたホテルのようで、お洒落で落ち着いている雰囲気だ。
頭は仕事モードになっていて、考える余裕がなかったけど、個室について準備を終えるといきなり緊張が襲ってきた。
「さ、お迎えに行こうか」
「はい」
いよいよ、だ。十年ぶりに生の大くんに会う。
大くんは、すでに昨日沖縄入りしており、一日ゆっくりしていたみたい。休みを与えないとダメだってマネージャーさんが言ってた。