シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
カツカツカツと足音が聞こえてくる。
目を背けてはいけない。仕事なんだからしっかりしなきゃと思い、ドアをじっと見つめる。もう、過去に囚われないで生きていくんだ。真っ直ぐ歩いて行くんだから。
ドアノブが降りると、扉が開かれた。
「お待たせしました」
池村さんの後ろに見えるのは、サングラスをしたオーラを放っている男性。眩しい。オーラという光が見える気がした。
二人がゆっくりと出てくる。私は思わず一歩、下がってしまう。しっかりしなきゃと気持ちを落ち着かせて平然を装った。
「杉野と申します。お世話になります。よろしくお願いします」
ビジネスマンの見本のような挨拶をして名刺を差し出す杉野マネージャー。サングラスをさっと外して、Tシャツの胸元にひかけた大くん。一つ一つの動きが感動するほど、魅力的でたまらない。大くんであって、大くんじゃないみたいだ。
両手で名刺を受け取った。
「紫藤大樹と申します。よろしくお願いします」
丁寧な口調で明るく爽やかに挨拶をした。芸能人オーラを放っているが嫌味っぽくない誠実な対応を見て、大くんらしいと心でそっと呟く。
大……く……ん。思わず涙が溢れそうになるのをなんとか抑えつつ見ていると、視線はゆっくりと移動して私に向けられる。目が合った。間違いなく、私が過去に愛した大くんだ。
でも、睨まれた感じがしたのは気のせいだろうか。震える手で名刺を差し出す。
「初瀬美羽と申します。よろしくお願いします」
受け取った大くんは、黙って名刺を見つめる。噛み締めるようにじっと名刺を見て無言になるから、ドドドっと変な風に心臓が動き出す。
すると、大くんは完璧な作り笑顔を向けた。
「たしかに。キミ、真っ白な羽みたいだね」
初めて名前を教えた日と同じことを言ったのだ。きっと、わざと。
あの笑顔も嘘だ。営業用の偽りの表情だ。だけれども、目を見つめられて会話しているのだと思うと色んな感情が一気に溢れ出す。――やっぱり、この仕事、無理だよ。どうしよう、どうしよう、しか頭に思い浮かばない。
目を背けてはいけない。仕事なんだからしっかりしなきゃと思い、ドアをじっと見つめる。もう、過去に囚われないで生きていくんだ。真っ直ぐ歩いて行くんだから。
ドアノブが降りると、扉が開かれた。
「お待たせしました」
池村さんの後ろに見えるのは、サングラスをしたオーラを放っている男性。眩しい。オーラという光が見える気がした。
二人がゆっくりと出てくる。私は思わず一歩、下がってしまう。しっかりしなきゃと気持ちを落ち着かせて平然を装った。
「杉野と申します。お世話になります。よろしくお願いします」
ビジネスマンの見本のような挨拶をして名刺を差し出す杉野マネージャー。サングラスをさっと外して、Tシャツの胸元にひかけた大くん。一つ一つの動きが感動するほど、魅力的でたまらない。大くんであって、大くんじゃないみたいだ。
両手で名刺を受け取った。
「紫藤大樹と申します。よろしくお願いします」
丁寧な口調で明るく爽やかに挨拶をした。芸能人オーラを放っているが嫌味っぽくない誠実な対応を見て、大くんらしいと心でそっと呟く。
大……く……ん。思わず涙が溢れそうになるのをなんとか抑えつつ見ていると、視線はゆっくりと移動して私に向けられる。目が合った。間違いなく、私が過去に愛した大くんだ。
でも、睨まれた感じがしたのは気のせいだろうか。震える手で名刺を差し出す。
「初瀬美羽と申します。よろしくお願いします」
受け取った大くんは、黙って名刺を見つめる。噛み締めるようにじっと名刺を見て無言になるから、ドドドっと変な風に心臓が動き出す。
すると、大くんは完璧な作り笑顔を向けた。
「たしかに。キミ、真っ白な羽みたいだね」
初めて名前を教えた日と同じことを言ったのだ。きっと、わざと。
あの笑顔も嘘だ。営業用の偽りの表情だ。だけれども、目を見つめられて会話しているのだと思うと色んな感情が一気に溢れ出す。――やっぱり、この仕事、無理だよ。どうしよう、どうしよう、しか頭に思い浮かばない。