シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
『誕生日おめでとう。美羽が生まれた日は秋晴れでね。雲が美しい羽に見えたから美羽にしたのよ』
バイトを終えて家に戻ると、母から誕生日祝い電話がかかってきた。
毎年聞かされる話なんだけど、なんだか心が温かくなるのだ。

「ありがとう、お母さん」
『いっぱい勉強して立派になるのよ』
「うん、じゃあまた連絡するね」

チャイムが鳴った。きっと紫藤さんだ。
今日は求められても拒否をしてみようかな。
付き合っているんじゃないし、抵抗する権利はあるよね。

「ただいま、美羽」
玄関に入るなりギュッと抱きしめられると、抵抗できなくなってしまう。それほど、私は紫藤さんに惚れている。
自然とキスをされてそのまま布団へと連れて行かれるのだ。
布団に寝かされて首筋を舐めてくる。ペロペロと子犬が甘えるように、ピッタリとくっつかれた。至近距離で目が合うとドキッと心臓が動く。
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