シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「いいよ。会おうよ。でも、あまり目立つ行動するなって言われてる。大事な時だからって」
売れ始めてきたからだろうか。紫藤さんは、初めて芸能人らしいことを言った。
そして、彼がトップスターになったら会ってもらえなくなるかもしれないと考えると、焦りのような不思議な感情が湧き上がってきた。
ゆっくりと、紫藤さんの元へ行く。布団に腰を下ろすと、頭を撫でながら切なそうに笑った。
「売れるのは嬉しいけど、自由が無くなっちゃうな。美羽ともっと色々な所に行きたかったんだけどな。連れ回したら、美羽にも迷惑をかけてしまうだろうから」
「迷惑……?」
「パパラッチってすげぇらしいぞ」
「そうなんですね」
芸能人ってプライバシー無さそうだよね。人気があっても大変そうだな。
「美羽。男、できた?」
「いませんよ、そんなの。万が一いたら、紫藤さんとこんなことしませんよっ」
「じゃあ、あのいかにも男へあげそうな、包装されたのは、なに?」
隠しておいたつもりなのに、見えてしまったらしい。
布団から立ち上がり取りに行き紫藤さんへ差し出した。