シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

「ちょっと早いですけど……。あの、安物なんですけど……。お誕生日おめでとうございます」
「俺に?」
予想外のでき事に驚いた顔をする紫藤さんは、ちょっとはにかみながら受け取ってくれる。
「見ていい?」
「はい」
丁寧に包装紙から取り出すと、じっと見つめて喜んでいる。
黒い革にシルバーの星がぶら下がっているシンプルなストラップだ。

「美羽、ありがとう」

早速、携帯につけてくれる。キラキラと光る星には、紫藤さんが大スターになりますようにって願いを込めて送ったの。
喜んでくれたみたいで安心し、ほんわかした気分でいると、紫藤さんの黒目はもっと色濃くなった気がした。

「こんなことされたら、ますます抱きたくなるんだけど」

彼女にしてくださいって、素直に言えたらいいのに。
私、紫藤さんの恋人になりたい。
今日も、やっぱり流されてしまう。だって、紫藤さんがあまりにも魅力的なんだもの。
紫藤さんの手で体中に触れられると、そこから火がついたように熱くなって火照る。いつも、微熱があるみたいな状態になるのだ。
あっという間に一糸まとわない姿にされてしまって、いつも以上にキスマークをつけてくる。

「美羽の誕生日は、いつ?」
突然真剣な声で聞かれて「十月……十四」と、余裕が無い中、答えた。
「今日だったのか。言ってくれればいいのに。何も用意してないじゃん」
切なそうな声で囁かれた。
そして甘い時間が続き……

「あのさ……セックス目的だと思われたくない」
じゃあ、何が目的なんですかって聞く勇気が出ない。

すべてが終わり、スースーと寝息が聞こえてくる。
疲れているのに、わざわざ会いに来てくれたんだね。その気持ちが嬉しくて、胸がキュンってなった。そして私もそのまま眠ってしまった。
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