シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
気持ちを落ち着かせるようにソファーに座る。
テレビも音楽も流さないで静かな部屋の中にいた。
言えない。大くんは、大変な時なのだから……言えるわけがない。
まずは母親に相談しようと電話と携帯を握るけど大激怒して堕ろせって言われることが予想つく。お父さんは泣いて怒るだろう。
でも、大好きな人の子供なのだ。産みたい。どうしたらいいのだろう。
今すぐに相談できるのは、玲しかいなかった。玲は、もう二十三時だったのにすぐに会いに来てくれた。
「美羽、泣きながら電話なんて、どうしちゃったの?」
「……」
「いいよ。泣きなさい。落ち着くまでそばに居てあげるから」
玲は私を包み込むように、何も言わずにそばに居てくれた。
気持ちが落ち着いてきて、ゆっくり玲を見つめながら「妊娠検査薬に反応が出て……」と言うと、玲は怒り出すかと思ったら落ち着いた表情で私を見ていた。
「さっき、トイレ借りた時、箱落ちてたよ。動揺したんだね美羽」
「大くんに言おうと思ったら、週刊誌に撮られてしまったみたいで、会えないって言われたの」
「でも、二人の赤ちゃんなんだよ? まずは病院に行こう。早く行って確実なことなのか調べないと」
「うん」
不幸中の幸いだったのか、夏休み期間中で良かった。
玲は泊まってくれて何かあればすぐに連絡をしてと言ってくれた。
翌日、一人で産婦人科に行って検査を受けて、待っていると、泣きたい気分になるがぐっと堪える。強くならなきゃいけない。大くんだって頑張ろうとしてるのだから。
名前を呼ばれて診察室に入った。お医者さんは男性で意外にも冷静な対応で「六週目ですね」と事務的に言った。
二日間。誰にも会わず、バイトも休ませてもらい一人で考えてる。雨が降っていて、窓がカタカタと揺れてビクッとなった。
大くんが初めて訪ねてきた日も雨だった。まさか、あの時はこんな風になるなんて思わなかった。一人で悩んでていても、時は流れていくだけ。
勇気を出して大くんに電話をかけてみる。
『今、かけようと思ってたんだ』
弾んだ声を聞くと心が温かくなる。
「大くん……ごめんね」
『え、どうしたの?』
「……」
『いつも、一人で寂しいだろ。ごめん』
「一人じゃないんだ」
『どういうこと? 誰かそばにいるのか?』
息を大きく吸って一気に言う。
「赤ちゃんができたの」
言葉を理解しているのか、シーンと静まり返っていた。緊張でドクドクと心臓が激しく動き、こめかみまで痛み出す。
『そうか。そうなんだ。俺と美羽の子供か』
予想とは違った優しい声が電話越しに聞こえてきた。
『一人で悩んでたんじゃないのか?』
「ちょっとだけ」
『不安にさせてごめんね。ちゃんと事情を言って結婚させてもらおう。美羽のご両親にも挨拶しなきゃな』
「大くん」
『何があっても、俺は美羽を守るから』
安心して、涙がポロッとこぼれ落ちた。
『身体、大事にしろよ。何か必要な物があれば言って? 送るから』
「うん」
その電話で何となく自信がついたのか、不安が取り除かれて元気な赤ちゃんを産もうと決意した。
その日の真夜中。
突然鍵が開いて、入ってきたのは、髪の毛の長い女の人……じゃなくて、大くん!
「美羽、どうしても会いたくて女装してきた」
ギュッと抱きしめてくれる。
「大くんっ」
「一人で不安だっただろ。ごめん。俺が美羽と、子供を守るから」
「うんっ」
「芸能界にいれないかもしれないけど、苦労させるかもしれないけど」
「いいの。一緒にいてくれればいい」
お互いに涙を流し合う。なにもなくていい。苦労してもいいから、どうか一緒にいさせて。祈るような気持ちだった。
お腹に手を当てた大くん。
「元気で生まれてくるんだぞ」
優しいパパの顔で、私までもが和んだ。
気持ちを落ち着かせて布団の上で抱き合って眠る。大好きな人の呼吸を感じながら、眠る幸せは、何にも変えられない。愛してるよ。大くん。
大くんは、太陽が昇る前に帰ってしまった。仕方がないことなのだけど、ちょっぴり切ない。
テレビも音楽も流さないで静かな部屋の中にいた。
言えない。大くんは、大変な時なのだから……言えるわけがない。
まずは母親に相談しようと電話と携帯を握るけど大激怒して堕ろせって言われることが予想つく。お父さんは泣いて怒るだろう。
でも、大好きな人の子供なのだ。産みたい。どうしたらいいのだろう。
今すぐに相談できるのは、玲しかいなかった。玲は、もう二十三時だったのにすぐに会いに来てくれた。
「美羽、泣きながら電話なんて、どうしちゃったの?」
「……」
「いいよ。泣きなさい。落ち着くまでそばに居てあげるから」
玲は私を包み込むように、何も言わずにそばに居てくれた。
気持ちが落ち着いてきて、ゆっくり玲を見つめながら「妊娠検査薬に反応が出て……」と言うと、玲は怒り出すかと思ったら落ち着いた表情で私を見ていた。
「さっき、トイレ借りた時、箱落ちてたよ。動揺したんだね美羽」
「大くんに言おうと思ったら、週刊誌に撮られてしまったみたいで、会えないって言われたの」
「でも、二人の赤ちゃんなんだよ? まずは病院に行こう。早く行って確実なことなのか調べないと」
「うん」
不幸中の幸いだったのか、夏休み期間中で良かった。
玲は泊まってくれて何かあればすぐに連絡をしてと言ってくれた。
翌日、一人で産婦人科に行って検査を受けて、待っていると、泣きたい気分になるがぐっと堪える。強くならなきゃいけない。大くんだって頑張ろうとしてるのだから。
名前を呼ばれて診察室に入った。お医者さんは男性で意外にも冷静な対応で「六週目ですね」と事務的に言った。
二日間。誰にも会わず、バイトも休ませてもらい一人で考えてる。雨が降っていて、窓がカタカタと揺れてビクッとなった。
大くんが初めて訪ねてきた日も雨だった。まさか、あの時はこんな風になるなんて思わなかった。一人で悩んでていても、時は流れていくだけ。
勇気を出して大くんに電話をかけてみる。
『今、かけようと思ってたんだ』
弾んだ声を聞くと心が温かくなる。
「大くん……ごめんね」
『え、どうしたの?』
「……」
『いつも、一人で寂しいだろ。ごめん』
「一人じゃないんだ」
『どういうこと? 誰かそばにいるのか?』
息を大きく吸って一気に言う。
「赤ちゃんができたの」
言葉を理解しているのか、シーンと静まり返っていた。緊張でドクドクと心臓が激しく動き、こめかみまで痛み出す。
『そうか。そうなんだ。俺と美羽の子供か』
予想とは違った優しい声が電話越しに聞こえてきた。
『一人で悩んでたんじゃないのか?』
「ちょっとだけ」
『不安にさせてごめんね。ちゃんと事情を言って結婚させてもらおう。美羽のご両親にも挨拶しなきゃな』
「大くん」
『何があっても、俺は美羽を守るから』
安心して、涙がポロッとこぼれ落ちた。
『身体、大事にしろよ。何か必要な物があれば言って? 送るから』
「うん」
その電話で何となく自信がついたのか、不安が取り除かれて元気な赤ちゃんを産もうと決意した。
その日の真夜中。
突然鍵が開いて、入ってきたのは、髪の毛の長い女の人……じゃなくて、大くん!
「美羽、どうしても会いたくて女装してきた」
ギュッと抱きしめてくれる。
「大くんっ」
「一人で不安だっただろ。ごめん。俺が美羽と、子供を守るから」
「うんっ」
「芸能界にいれないかもしれないけど、苦労させるかもしれないけど」
「いいの。一緒にいてくれればいい」
お互いに涙を流し合う。なにもなくていい。苦労してもいいから、どうか一緒にいさせて。祈るような気持ちだった。
お腹に手を当てた大くん。
「元気で生まれてくるんだぞ」
優しいパパの顔で、私までもが和んだ。
気持ちを落ち着かせて布団の上で抱き合って眠る。大好きな人の呼吸を感じながら、眠る幸せは、何にも変えられない。愛してるよ。大くん。
大くんは、太陽が昇る前に帰ってしまった。仕方がないことなのだけど、ちょっぴり切ない。