シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
数日後、玲からの着信が入っていて仕事を終えた後、かけ直す。この前の飲み会に行けなかったから申し訳ないなぁ。小桃さんにもたまに会いたかったのに。
大学時代に小桃さんを玲に紹介したら仲良くなったんだよね。あの二人、おせっかいで親切なところが似てるんだ。
温かい気持ちでコールを鳴らしていると、出てくれた。
「もしもし、玲。ごめん」
『相変わらず、仕事大変なのね』
「うん。この前、ごめんね。小桃さん元気だった?」
『あぁ、うん。あのね、謝らないといけないことがあるんだ』
深刻そうな声を出した玲。一体、なんだろう。
「なに? どうしたの?」
『実は……小桃さんと飲んでいたら紫藤さんが入ってきてね。はなのしおりの秘密を聞かれたの』
「……うん」
『本当は美羽の口から聞かせるべきだったのに……ごめん』
「そっか。ありがとう」
自分で言えなかったことを友人の玲が伝えてくれたのだ。
どんな気持ちで言ったのか、私にはわかるから、玲を責める気にはならなかった。
『美羽に会いたがってたよ』
「そっか」
子供のことを聞いて、大くんはどんな風に思ったのかな。少しは、私への憎しみが消えたかな……。憎まれ役でいいと思っていたのに、善人に見られたいって思うなんて私は自分勝手な人間だな……。
『着信拒否してるんだって?』
「……うん。もう少し心の整理がついたら電話しようかなって、最近決心がついたの。その前にライブに行くから、直接会っちゃうかもしれない」
駅に向かって歩いていると、大くんがモデルになっている時計の広告がある。それを思わずじっと見つめた。
『それでね、小桃さんにも色々と教えちゃった』
「そっか。言いふらすような人じゃないから、いいよ。色々と気を使わせてごめんね」
『美羽。幸せになりなよ』
「ありがとう」
電話を切って深呼吸をする。
あの頃はお互いに子供だったけど、今はもう大人。ちゃんと判断できる年齢なんだから、大丈夫だよね。