シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

「きゃー、テンション上がる!」
ライブ当日があっという間に来てしまった。
朝からテンションの高い千奈津。私は冷静さを保つように、何度も深呼吸をしていた。
仕事を早めに切り上げて向かう予定になっている。
「ね、楽しみだよね?」
「あ、うん。でも、仕事だから」と苦笑いしている私。でも、内心は口から心臓が出てきそうなほど、バフバフしていた。
十七時開場の十九時開演。
大きな会場でコンサートをしてしまうほど、大くんは有名になったのだ。
「今日は十六時半に会社を出るぞ」
杉野マネージャーが、業務の一貫というような口調で言う。
「了解しました」
千奈津は、愛想のいい返事をしたけど、杉野マネージャーが遠ざかって行くとこちらを見る。
「ギリギリじゃない?」
不満を漏らしていた。
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