先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
スマホを起動するとロック画面が表示された。

うわ、ロック画面も俺じゃん。

0205(2月5日)…。

あ、開いた。ガチじゃん…。

「それで!その緑のアプリ!あ、はい!それ!私のSNSアカウントです!」

俺もよく利用していたSNSアプリをタップするとすぐに女のプロフィール画面が表示された。

​───────​───────
【つ ぼ み】(16)
♡キセキ様推し
♡同担拒否
#今日も推しが尊い
​───────​───────

「きゃっ…推しにその文言を見られる日が来るなんて…っ」

呑気なもんでニマニマとだらしなく頬を脱力させる女。

ふーん、まだ高校生かよ。

俺の5つ下だな。

てか、同担拒否かよ。

※【同担拒否】
▶︎ 同じアイドルを応援しているファンと交流を持ちたくない、という姿勢。

「あ、あの……!」

「なんだ」

「どうして芸能界引退しちゃったんですか……」

恐る恐るそう尋ねた女は信じられない、というようにゆらゆらと揺れる瞳を俺に向けた。

まぁ、突然だったからな。

事務所にもマネージャーにも死ぬほど止められた。今が踏ん張りどころだ、とか云々。

アイドルもやりがいのある仕事だったけど​───────…

「殺し屋をやりたかったからだ」

「へぇ!そうっ、なんですね…っ」

そう。

1週間前から俺1人で始めた殺し屋業。
< 11 / 59 >

この作品をシェア

pagetop