先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
こんな時間に……??

「そうそう。あそこの店」

そう言って少し向こうのきらびやかな店を指さした男の人。

私は口をあんぐりと開け、硬直した。

「ハッ……!!」

明らかにいかがわしい店……っ!

ホストクラブだーーーーーっ!!!

ダメです!あんなとこ!

「私お金、一銭も持ってませんので!」

声に出して気づいた。

あぁああああ……っ、そうだ!

私、一文無しじゃん!…っもう!!

終電云々より、そもそも乗る金ないー!

てか乗ったとて! 家帰ったとて!

立ち退き迫られてるから危ういー!

「いいよいいよー。お嬢ちゃんまだ高校生でしょ? 体で払ってく子もいっぱいいるし」

「へっ? 体……っ!?」

「ほら。行こ」

「えっ、あっ……」

強引にグイッ、と腕を掴まれてしまい、ジワジワと込み上げる恐怖で戸惑っていたその時。

「おい」

すぐそばから私の大大大好きな声が聞こえてきたような気がした。

「そいつ俺の妹なんで。腕、離してもらえますか」

「チェッ、妹かよ……」

そのまま、男の人は私の腕を離し、スタスタと歩いて行ってしまった。

「キッ、キセキ様…っ」
< 20 / 59 >

この作品をシェア

pagetop