先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
男の人が去っていった代わりに私のそばに居たのはなんとキセキ様だった。

夜のきらびやかなライトに照らされたお顔はとてもとてもお美しく、それはそれは甘美なもので、思わず見とれてしまう。

「ど、ど、ど、どうしてここに……っ」

まさか私のことが心配で来てくださったとか!?

なんて一瞬そんな素敵な理由が思い浮かぶけどそんな訳​────

「はぁ…、家賃払えてねぇ、とか言ってたから、まさか電車代もないんじゃねぇかと思って、様子見に来ただけだ。てかそもそもこの時間じゃもう電車ないし、それにこの辺危なっかしいし」

​───────様子見に来ただけだ​───

​───​─様子見に来ただけだ​​─────​─

​──様子見に来ただけだ​───​───​──

何度も脳裏を過ぎるキセキ様の声……。

「様子を……見に来て下さったんですか…っ」

私の事が心配で……、???

ため息混じりに呆れたような視線を私に向けていたキセキ様だったけど、やがて優しく私の腕を触り、視線を落とした。

落とした先はさっきまで男の人に掴まれていた部分で……。

心配そうに「怪我してないな?」と、まるで大事な宝物を査定しているかのように柔らかく眉を下げた。
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