先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
‪”‬推しは推せる時に推せ‪”‬

よく言うけど、本当にその通り。

でも私は推しを推せる時に推してた。

でも……推しがかっこよくて、尊くて、どれだけ推しても推し足らなかった。

まだこの先何十年も何百年も推していたかった……。

あぁ…、私の推し……。

今頃どこにいるんですか。元気ですか??

私はもう二度と推しに貢げない……。

それが何よりも虚しくて悲しくて、私の生きる活力を根こそぎ奪っていった。

「…」

「え? それだけか?」

僅かな沈黙の後、素っ頓狂な声が落とされて、我に返った。

「それだけ……ってなんですか」

「は?」

込み上げるのはもう涙じゃなくて、怒りだった。

「推しは第2の心臓なんです。そんな……っ、軽々しく言って欲しくないです」

「チッ…」

彼の舌打ちがやけに大きく響く。

見えないけど、きっとつまんなそうな顔付きをしているんだろう。

間髪おかず「殺す価値もねぇな」と言われ、私の心にグサリ、と何かが突き刺さったのを感じた。

もうすでに引っこ抜くことの出来ない損失感、または虚無感という名の強烈な針は何本も心にぶっ刺さっているのだけど。

それにしても、生きる価値も無ければ死ぬ価値もないのか。私は。
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