先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
たしかに…

昨晩、野宿しようとした時も全く抵抗がなかった、と言えば嘘になる。

「はい……嫌、です…」

渋々、私はそう答えるしかなかった。

広げた手を力なくダラン、と下ろす。

その様子を隣で見ていた大家さんがどこか誇らしげに呟く。

「いい彼氏さんね」

「…」

「かっ…、、、」

頭にカー!と猛スピードで血がのぼる。

「彼氏じゃないです……!! キセキ様がわ、わ、わ、私の彼氏だなんて!! 1兆年早い次第であります…!」

「あら? そうなの?」

さっきまでとは打って変わってだいぶ朗らかな表情になった大家さんは満足気に札束を手に帰って行った。

幻想的に雲の隙間から夕暮れが差し込む中。

頭にポンッ、と手を置かれた。

「…っ、」

「じゃあ、俺帰るな」

やば……。

は? なにこれ。なにこれ。

キセキ様の手が……っ、

私の……頭の上に……………??

ファンサ……エグ…

あー、もう一生頭洗わないでおこう。

「いいか? これから先。お前に別の推しが出来たとしても、もうやたらめったら貢ぐんじゃねぇぞ…。ヲタ活は程々に…っておい!」

あ、やば…。

なんか視界がぐらん、ってなって…、あれ??

いつの間にか……

「おい!…おい!」

キセキ様に…、

抱きしめられているような気が​─────…
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