先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
あっ、ゆっくりキセキ様のお顔が私の唇に近づいて​くる───────…

食べられる準備を整え、目をつぶったけど唇には特に何も触れず、代わりに耳たぶに軽く吐息が当たった。

「あぁいうの…、気軽に言わない方がいいぞ?」

「へ?」

落とされたキセキ様の声に全身がカチッ、と硬直する。

「男ならすぐその気になって​────」

……違う。

……………違うもん。

私は……、私は……っ、、、

たまらず言い返してしまった。

「キセキ様にしか言いませんもん!」

自分でもびっくりするぐらい大きな声が出てしまって動揺する。

でも……っ、誰にでも言ってる訳じゃないもん…。

昨日、ホストクラブ連れてかれそうになった時、体で…とか言われてやだったもん…!

「襲われたいと思うのも、食べられたいと思うのも、この世にキセキ様しかいませんもん!」

ポタ、と涙が頬を伝ってベッドのシーツの上に落ちた。

「キセキ様が他の女の子抱いてるの想像しただけでも嫌ですもん……っ!!だって私…! 同担拒否ですよ…!? ぐすんっ、そんなの……っ、耐えられない…っ」

「あぁ、ちょっと……、これから学校行くんだからそんな泣くなよ!」

「わぁああああん……っ、、今までずっと……っ、いつかニュースでキセキ様の結婚報道が流れるんだ、って思ったら夜も眠れなくて…ぇええ……っ、、、わあああああん……っ」
< 47 / 59 >

この作品をシェア

pagetop