先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
ーーズルッ…

体勢が前に倒れてしまい、両手を付いて、派手に転んでしまった。

「やだー!転んでるー!」

「あはは!ざまぁじゃん!!」

「…っ」

膝と手のひらからは赤い血が流れていた。

いたた…。

立ち上がろうとしている隙に、すぐ横を別のチームが走っていって、あっという間に私以外のアンカーはゴールしてしまった。

………立てない。

膝じんじんするし…、痛いし。

多分このままゴールしても、クラスのみんなに責められるし…。

諦めかけたその時だった。

「……み………〜…」

どこからか声が聞こえてきて、顔を上げた。

え…っ

みんなの視線が徐々に私から外れて、別の人に移されていく。

「つぼみちゃん…っ!!!!」

「…っ」

ゴール付近の保護者席に、彼はいた。

深く被った麦わら帽子…、サングラス。

そして両手にはカラフルに光るペンラ……。

仁王立ちして、ペンラを左右に全力で振っている人がいた。

保護者も教師も生徒の視線も独占し、多分今この会場にいる誰よりも彼が目立っていた。


「諦めたらそこで!!
ヲタ活終了だぞーーーーーーーー!!!」
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