先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
***

「んがっ……」

鼻をつままれた感覚で目を覚ますと、そこは夕日が差し込む保健室だった。

いつの間にか体育祭は終わっていたようで私の体はベッドに仰向けに寝かせられていた。

そして視界の端になんだか一際キラキラとする人影が映った。

「目、覚めたか?」

「あ…キセキ様……」

……あれ。

はっ!

「もしかして私…っ、また気を……!?」

「失ってたぞ」

「はぁうわぁあああ……っ、ってことはここまでキセキ様が…」

「運んできてやった」

「はぁうわぁあああ……っ、」

どうして私はいつも推しに迷惑を…!

「すみません…っ、多分‪”‬キュン‪”‬が限界値を迎えると気を失ってしまうんです……、キセキ様のライブに初めて参戦させて頂いた時も…、気を失ってしまいました…」

「ぷっ、ほんと変な奴…」

あぁ……笑顔がお美しい。神。

あ、そうだ。

「そういえばキセキ様…、どうしてここに……っ?‪」

わざわざ私の体育祭に参戦しにいらして下さるなんて…!

一体どういうこと!?

頭がグルグル回転しそうになりながら尋ねると、少し照れたようにキセキ様が口を開いた。

「…お前に、伝えたいことがあって」
< 55 / 59 >

この作品をシェア

pagetop