先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
ゆっくりと頭の上に彼の手が乗せられる。

でもすぐにそれは痛みに変わった。

「んっ…」

突然髪の毛を引っこ抜かれるんじゃないか、と思うぐらい強く掴まれ、また強制的に顔を上げられる。

再び額に当てられた拳銃が今度こそ発砲される気がした。

痛みに顔を歪め、その時まで待つ。

「5​───────…」

小さくそんな声が落とされ、親切な方だな、と思った。

カウントダウンしてくれるなんて。

てか…、そういえばこの人の声……どっかで聞いたことある気がするな……。

「4​───────…」

まぁ、気のせいか。

「3​───────…」

ありがとう。私の推し…。

「2​───────…」

あなたのパフォーマンスで私は何度も天に召されました。

そしてまもなく……、

本当に天に召されようとしております……。

最後に一目でいいからお会いしたかった。

「1​───────…」

さようなら​───────…

しかし‪”‬0‪”‬が言い放たれる直前。

きっと両者予期せぬ事態が起こった。

目隠しが……シュルリ、と外れたのだ。

それがポト、と地面に落下する。
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