先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
「ん……っ」

クリアになった視界は薄暗くて、カチカチと今にも光が途絶えてしまいそうな、か弱い豆電球がひとつ。視界に飛び込んでくる。

その時はじめて。自分は昨晩から倉庫みたいな場所に捕らえられていたんだ、と知った。

そして視界の中心……、

私の瞳を、ひとたまりもなく釘付けにしたのは彼だった。

一直線に私の額に拳銃を突きつける彼……。

羨ましくなるぐらいサラサラの黒髪。

無造作に揺れ動く前髪なら覗くパッチリ二重の瞳…。

その瞳孔には髪の毛が乱れた私が無様に映り込んでいた。

目が合った彼の瞳が揺れる。

「あ、やべ…目隠し外れた……まぁいいか」

「んっ……っ、んんー!!んーーーー!」

「あ? なんだ? 直前で命乞いか…?」

「んっ、んーーー!んーーーーーーっっ!!」

「おぉ、そうそう!そういうのが欲しかったんだよ!」

私が叫べば叫ぶほど彼は嬉しそうに頬を緩ませた。

声色もさっきまでとは桁違い。

すごく嬉しがっているのが見て取れた。

「じゃあ殺すな」

誇らしげに。満足気に。

そう言った彼は引き金に人差し指を添えた。

「んー!!!んーーーーーー!!!!!」

待って……!待って………!!

私は叫ぶ。

嫌!待って!
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