君は優しい嘘つき
「閉め出された?」
「そう」
「……どうして?」


隣で動く気配がして、視線を戻せば薄闇にぼんやりと歩が笑うのがわかった。


「不良息子ってさ」

……笑うところなの?

温厚な歩のお父さんがそんなことを言うのが想像できず、でもそれが本当だとしたら歩は一体何をしたんだろうか。


「でもだからって追い出すことはねぇよな」
「……それは、そう。……なのかも」
「そうだろ、だってもう夜中だぜ」


暗闇に浮かび上がった長方形の光。
その液晶に映し出された23:59の文字が、たった今0:00に変わった。


「鍵は?」

いくら閉め出されたと言っても、鍵があればいつでも帰れるだろうに。

「あるよ」
「……帰らないの?」
「今戻ったら親父に遭遇する」
「ダメなの?」
「そりゃダメだろ」
「何で?」
「はんこーきって奴だよ」

いまいちよくわからないけれど、「だからこうやって暇つぶしてんの」と笑った歩につられて、少しだけ笑ってしまう。

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