ずっと特別なマブダチで

ずっと特別なマブダチで

 私は、父子家庭だった。ニ年前の小学六年生のときに、母が病気で亡くなった。何でも相談できる友達や恋人が居ないので、いつも不安や悩みは閉ざしたままで、モヤモヤしているままだった。

 数日前、二年生になる頃の三月。家から数分で着く近くにある川へ来た。ここで悩みを思いきり吐き出そうと思った。

「なんで私だけが不幸なんだよ! この世界本当どうなってんだよーっ!」

 私は人が居ないのを確認し、川へ向かって大声で叫んだ。思いの外、心がすっきりした。

「ふっ、あはは。君、面白いね」

 突如、背が高くて優しい笑みを浮かべている男性が声を掛けてきた。

「え……」

「あ、ごめん。たまたま通りかかって今の言葉聞いちゃって」

 どうやら怪しい人ではないようだ。そう思い、私は心の底から安心した。

「俺、中学三年生。君は?」

「あ……中学二年生です」

「一個下か。俺よくここ来るんだ。だから良ければ来れる時来てよ。話し相手になってほしい」

 そう言って、彼は微笑んだ。私はドキッ、とした。胸がドキドキして、感情が揺さぶられる。“一目惚れ”というものだろうか……。

「俺の名前は佐倉 葵(さくら あおい)

「え……私は、蒼井 咲良(あおい さくら)です」

「……お互い、同じ苗字と名前なのか。こんな出会いってあるんだな」

 ――私は、直感だけど“運命の人”だなと感じた。

「あ、ていうかその制服、桜ヶ丘(さくらがおか)でしょ? 俺もなんだよね。今度学校で会ったら話しかけてよ」

「は、はい……! 佐倉先輩、よろしくお願いします」

 そう言うと彼は微笑んだ。こんなにも甘くて暖かい笑顔の人って、存在したんだ……と思った。
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