真名子さんの名(字)活
【金太 真名子⚫さい】
胸に名前のかかれたプレートをつけて立食形式で会場に入る。
ちなみにフリガナはついていないので、会場の殿方達は私の事を誰も【金玉な子】など思わないだろう。
ホルモン旦那曰く、婚活より酒の試食会メインだから正直レベルは期待出来ないと話していたが。
「へぇみさちゃんて言うんだ~。素敵な人と飲めて嬉しいよ」
「やだぁ~もう~」
「あ、28歳なんですね。私よりお若く見えたけど同い年ですね」
「本当だ。さゆりさんも28歳なんですね」
おぉぉぉいおいおいおいおい!!
待って待って待って!ちょっとタンマちょっとタンマ!!
一回カメラ止めてと怒号並の監督くらい、ぶんぶん両手を左右に降りたいくらいのなんだこの私の疎外感。
サクラもね?いるっつってた。
わっかんない!どれがサクラ?見渡す限りどの男女もサクラ咲いてる。
あっれぇ?ペア決めの時私休んでたかな?先生~!金太さんのペアの相手いませ~ん!ってお節介な学級委員が挙手しても良いくらい、ほっとんどペア。
私時間間違えた?って思った。14時から16時までの自己紹介無しのフリータイムのみって言うから真名子、社会人だから5分前に着いて会場入ったけどどした?皆さんなんなら朝から顔合わせして、今もうこんな状態?それなら納得って思うほどのターゲット決まってる感が凄い。
とりあえずパッと見、殺し屋並に会場にいるネームをつけた殿方、試食会で配られた酒の入ったグラスを銃を構えるように数えた。ざっと15人。
「ま、5分もあれば殺れるな」
なんて漫画ならあり得る台詞を言いたい所だけどビックリ。女子も男子もみーんな凄腕スナイパー。
あとリアルにグラス持って数えちゃってるからありゃりゃりゃ!ってでっかい声でちょっと床に溢して、壁側でインカムつけてるホルモン旦那が睨んでた。ごめんて。
とりあえずさっさと自分の中のターゲットを絞りたいので、言われた通りニコニコしながら会場内をうろうろしてみる。
が!!!
あっれぇ?全然声かけられない。ここ!私ここにいるよぉぉ?って思いたいのだが、気付いてたけど気付かないフリしていたというか、あれ?マジか?マジだそれぇっていうか。
女子けっこうレベル高くない??
んんん?
衰えてきたけどまだまだ現役の視力が察知している。
ドブスがいねぇ。おでぶもいねぇ。
年増もそれほど歩いてねぇ。
いや、ソフトな婚活言ってたから?確か女性の参加費1000円だった。何か1000円で飲めるならいっちゃうー?彼氏いるけどーみたいな友達とノリで来た?
私だけ?15人の殿方の名前瞬時で全部覚えていくの。右から左へと、頭の脳ミソフル回転でそろばんを弾くように名前をインプットさせていく。
ちなみに一番のタイプは、会場の奥側で女と話している土門さん31歳。
童顔でちょっとイケメンというかなんなら可愛い系で、異性との交流無さすぎて自分の好みのタイプがこんな感じだったっけ?と、思いながら職場でほぼクロックスしか履いていないパンプスは新人レベルのヨロヨロ足で、歩くスピードを早めながらアルコールが入ったグラスをぐるんぐるん酒、回転しながら近付いてみる。