真名子さんの名(字)活
土門さんと隣で飲んでいたロングの髪の毛をふわっとさせて、清楚系ワンピースを着ている女子アナちっくな【山中沙織 25歳】も私の質問にお主、やるなみたいな感じでグラスを口に含んだのを、私は見逃さない。
ライバル、またわ戦友。
時にはここは俺の屍を越えていけもあるが。
「彼女はいませんよ。仕事が忙しいと言いたいのですが、なかなか出会うきっかけがなくて」
今!まさに!出会ってる!
見てみて!ここにいる。今まさに出会い中の出会い。THE出会い!
これが出会いじゃないなら私と山中沙織はモブか?
漫画でその他大勢の背景をアシスタントが書くレベルか?
「私……土門さんともっと仲良くしたいです」
山中沙織は先制攻撃をする。
金太真名子は構えている。
「え、あ、ありがとうございます。僕もそう思ってました」
二人は仲間になる。
金太真名子はダメージをくらう。
「土門さん」「沙織さん」
金太真名子は白目を剥いた。。
金太真名子はちょっとムカついた。
金太真名子はちょっとムカついたのでアルコールを口にした。
「おぼぼぼぼろろろろろ!!」
金太真名子は必殺技リバースを唱えた。
会場内で賢者が唱えた祓いの魔法をくらって、断末魔のような悪魔の声と滝のような水飛沫音に、一斉に皆、マイナスイオンならぬマイナスしかない滝の場所を凝視する。
「お客様!大丈夫ですか!?さぁこちらへ!さぁさぁ!こちらへ!!さぁさぁさぁ!こっちこい!!」
ホルモン旦那が般若のような顔で若干素を出しながら、私を会場の外へ連れ出す。
ビックリした。すんごい足早いの。会場内、シーーンてなってたけど、ホルモン旦那の足の速さで連れ出された私を見て、更にシーーンってなってた。
あれ?今なんか流れた?流れ星の如く、今なんか飛び散った?吐瀉物。みたいなそれこそモブ達を横目に出口の扉バァァァン!て閉められて。
私ホルモン旦那にしこたま怒られて、なんならちょっとマジ怒られされて、久しぶりに泣きそうだったもん。
二度とアルコールを飲まないのと声を発さない事を条件に、ラストのカップル成立の所だけをホルモン旦那と、なんならその同僚数人に出口付近で犯人並に囲まれて見ていたら、
土門 サクラだった。
間違いなく私と山中沙織としか話していない土門、え?いた?アンタいた?みたいな女とステージに上がって「これからも彼女と美味しいお酒を飲みます」とか言っちゃってる。
俺の屍越えた山中沙織も白目剥いて、悪魔が憑いてるみたいな顔になってて、もう誰か祓いの呪文唱えてあげて。
さっさと帰れとホルモン旦那に言われて、もう体力も魔力も0になった私が帰り道、
まだ勤務中の筈の佐藤くんがしまむらに入っていく所見たけど今日の私も人の事言えないので、今度怒られてたら佐藤くんをフォローしてあげよう……。
「真名子リーダー、ぱっつん前髪似合わないですね」
って、本山ちゃんに言われて初めての婚活ヴァージンは、私のブラックメモリーに刻まれた日でした。