真名子さんの名(字)活

変装バレバレな、なんならもう隠す気もないホルモンの存在を忘れ、おむすび君とようやくじゃがいもの皮から人参の皮にチェンジした時にお互い軽く会話をする。

「お料理されるんですか?」
「僕は……しないですね。カレーくらいならなんとかというレベルで」
「全然立派ですよぉ」

会話の印象としては特に悪くない。しかし彼の目の下の青黒いクマと、栄養源全て抜け落ちた顔色の悪さが妙に気になる。

「真名子さんはお料理……出来そうですね」
「いえいえ、普通……かな?」

普通だからわかるんだ、普通だから肉じゃがは肉じゃがだし、今回のホワイトソースの使い道が、未だに未知のレベルで何度も作った事がある煮物の工程が間違えそうになる。

ふと【さおりん】を見たら
「私料理全然しないので~頑張ってくださ~い」と、包丁を慣れている髪うす男性に身を任せているし、トマト組はお互い料理人のような手つきで「次、持ってきな」みたいな雰囲気で事を進めている。

ホルモンはちょっと飽きてきたのか、サングラス外して欠伸をしながらスマホを見ている。
もはや何しに来たのか。

「僕……人参好きではないので……小さくして貰っていいですか?」
「え?あ、はい。小さくしますね」
「あ、出来れば玉ねぎは入れないで欲しいです」
「え……あ、はぁ」
「あ!白滝とか!もうこれ何の食感がわからないから邪魔ですよね~」
「…………」


何しに来たの!?ねぇおむすび!何しに来たの!?お料理!ここお料理婚活!!
お前の好き嫌いの為によけた野菜達は、農家さんが丹精込めて作っているもの!!
そして私白滝超好き!!!

包丁を持つ手に力が入って、これでもかと、小さくした人参をお前もみじん切りにしてやろうかと無言になる。
そしてそのまま玉ねぎも白滝も入れて、おむすび君はこの空気に気付いていないのか、また爆弾発言をかます。


「チッ聞いてねぇのかよ。ママなら絶対入れないのに」


アウトぉぉぉ!!
すいませぇぇん!この人アウトでぇぇす!!
肉じゃがホワイトソースよりアウトでぇぇす!!

どうりでおむすびの名前も全く記憶に入らないし、なんか本能だったのかな?
コイツとは来世でも会いたくないなって。私の遺伝子が全力で拒否してたのかな!?

よいしょー!と大きな鍋をゴン!!とわざとに乱暴にコンロに置いた所でホルモンが異変に気付き、長年のツーカー関係で目で会話をする。


『どうした?』
『コイツ、あかん』
『ま?どした?』
『コイツ、マザコン』
『我慢……しろ』
『出来るか馬鹿』
『りょ、余ったら肉じゃがくれ』

と、もはやおむすび君の話題は流され、完全にホルモン宅のおかずを要求される始末。

ホワイトソースをたっぷりと注いであげよう。

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