真名子さんの名(字)活
とりあえず日記帳に書いてあった内容を読み続けて、心底震えてかれこれ1時間。
私にはどうやら元彼がいたことを思い出す。そしてその男子のことが好きで好きで堪らなく好きなくせに、当時の私の情緒不安定が強すぎて本当にこれ私?って聞きたくなる。
『二時間目が終わって休み時間に小森に会いに行ったら、は?みたいな顔してぜんぜんかまってくれなくてこっちもは?ってなってなんかもう別れようー。なんでそんな顔するのー?意味わからん。でも別れたら寂しいし、やっぱり好きだし、大好きだよー。』
どうしたの?私。
何をしたいの?私。
読む限りではお付き合いしてるのかも怪しいが、私の記憶と日記帳に書いてある怪しい文章を照らし合わせてもやはりお付き合いはしている。
しかも何が悲しいって、7月20日の終業式に元彼の小森に一方的に別れを告げられた後に、私はしこたま部室で泣いたらしい。思い出してるのか、このページ涙で濡れた後がある。
可哀想、私可哀想と口を押さえるが、別れる本当の理由はどうやら小森に新しい彼女が出来たから私と別れたことをサラリと書いてる。
えっ!
小森外道過ぎない!?
今それやられたら私多分、たっぷり残ってる有給使って本物の南国に行って、あの先ほどの体制でボートに浮かびながら現実逃避してると思うよ!?
しかもそのページの横にへったくそな絵で、私と小森の笑ってる似顔絵書いてる。よくわからないポエム付きで。
『大好きな貴方は、もう私のことを見ていなかった。貴方はもう違う女の子が好きだった。濡れた涙、風に流れていきますように。貴方の所に飛んでいきますように。』
誰か!当時の私を優しく抱き締めてあげて!
そういや此処には書いてないけど、なんか泣きながら家の屋根に登って母に「屋根に登るな!壊れる!」って怒られた記憶あったわぁ。失恋して泣いてるのに、母に言い返したら「屋根は人が登る為に作られた物ではない!」って正論ぶちかまされて、部屋から出てこなかった私のメモリー。
それもこれも小森のせい。
大好きだった小森のせい。
結婚したら【小森真名子】になるのかぁって書いてる私の日記も小森のせい。
そんな小森と同窓会で会ったらあの時は~つってちょっと燃え上がり?
私凄い傷ついたんだけど、まだ時効にしてないよ?つって責任取らせたり?
真名子のここ、空いてますよ?つって婚姻届の相手の書く欄見せてみたり?
あるある、いけるよ。
同級生っつぅより、元彼というところがもうちょっとした運命かなって。書かれたポエムもきっと喜ぶと思うんだぁ。なんなら新しく書いてあげようか。
『遠回りしてきたけど、私と貴方は赤い糸で結ばれてきたの。だって私達は前世でも結ばれていたのだから。』
って、当時の私と対抗出来る、何処かで見たことしか無いポエムをぶちかましちゃうよぉ?
なれそめは
『そうですねぇ?母が私の日記帳を棄てずにとっておいてくれて、読み返すと彼のことをまだ好きな私がいました。』
なんて美談なストーリーまで練り上げちゃう、構成作家もビックリ。あぁ何か結果オーライならいいんじゃね?ってプロデューサーもきっとOKの指示出ると思うんだ。
そして迎えた同窓会。