真名子さんの名(字)活

辛くなる度、辞めよう絶対辞めよう、むしろここの建物火付けて跡形も無く消してやろうとか思って働いていたんだけど、なんかついてこいおめぇら!と、バリバリ体育会系のノリでレクとか運動とかロッキーのテーマ曲流して特訓?みたいな事してたら杖使用しないと歩行禁止の鈴木さんなんか、


「キンタマさんのお陰で杖無くても歩けるようになったよ」


とか、いや、鈴木さん。もう言っちゃってる。それもうバリバリ禁止ワードで私の事呼んでる。

仕方ないんだぁ。鈴木さん耳わりぃんだぁ。金太ですって自己紹介した時、目が合ってるのに鈴木さんたらもう聞こえないからとりあえず笑っとけーみたいな顔して、この時間を乗り越えようとしてたもん。
もう笑っとけばなんとかなるって社会出たら誰でも遭遇するであろう状況の乗り越え方法の技取得しちゃって、それ高齢になっても使ってて。


「鈴木さん!いいよいいよ!足上がってるぅ!あと5秒追加だねぇ!もう上がりすぎて腹筋も割れちゃうねぇ!」

なんて、個別訓練で一緒に身体を動かしながら応援してたら、終わった後に汗をかきまくっている私に鈴木さんがお名前は?なんて聞いてきてさ。



「鈴木さん、私……金太と申します」

「え?」

「金太です!金太真名子です!」




「そう……キンタマさんね」



なんてもう熱い握手とか交わしちゃったけど鈴木さん。私の名前、すんごい所で聞こえなくなっちゃったのね。
最後の力を振り絞って真名子の【ま】だけ聞こえたのかな?力の振り絞り方、ちょっと残念だった。本当に振り絞ったかな?って思ったもん。もう少し頑張れば、ま【なこ】まで聞こえたと思うけど、急に聴力閉店しちゃったね。

そんなノリと実績と入居者の信頼で施設側からあれ?この子には光るものがあるのか?なんて真名子の評価ぐんぐん上がって、同僚というか先輩からも真名子なら出来るよ!とか親指立てられたくらいにして、気付けば後輩からにも金太さんについていきますとか言われて、
とりあえず入ってくる新人には【金太】の名字で呼ぶなと上司の特権かまして日々働いていたらイマココ状態。

リーダーの真名子、SS(ステーション)に机とか用意されてなんかマイ判子ぼんっぼん押してPC使ってカッタカタキーボード押して、真名子の許可無いとその企画書通らないからみたいな立場で、とりあえず仕事の面はいい。



私のプライベートどうした?

いつでも婚姻届マイ判子でぼんっぼん押すし、PCで婚姻届ダウンロードする為にキーボードカッタカタ押すし、真名子の許可無く戸籍謄本の中身変えても良い。

どうした?


「んぎぃぃぃいぃい!!」

「真名子リーダーファイトです!」


いや、本山ちゃんもやって?
ヨウがこんにゃくみたいにブルンってなってんのYO。

私の支えて抱えている腕もプルプルで、こんにゃくなのかプッチンプリンなのかもうわかんない。


私のプライベートどうした?

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