真名子さんの名(字)活
「まぁ、出会い……っていうか?ある日突然やってくるもんていうか、実は身近な人でも運命の赤い糸で繋がってるっていうの?」
「うるせぃわ!結婚する前まで血眼でマッチングアプリ24時間かまして、なんとかっつぅ俳優似の男におめぇ1回山に捨てられてるだろ!」
「あれはね?私もよく生還したと思ったね。山の上に展望台があるっていうから展望台で告白されるかと思いきや、なんかもう四駆じゃないの車でそこ本気で登れる?みたいな山道走られて、私車内でガンガン身体ぶつけながらそれでも夢見てたし。車停めたいから降りて誘導してって言うから、ルンルンで降りたらもう見たことないタイヤの回転とエンジンの音を聞いて、バックして去ってったねぇ」
「深夜に、【明日の朝までに私からの連絡が無い場合は通報せよ】ってメールが来た時は、次の日早番なのに6時間しか寝れなかったわ」
「寝てるからそれ。しかも深夜にって既にクリアしてるゲーム機引っ張り出してレベル上げしてただけでしょ」
「しかもプレステ2な」
「なんで持ってんのよ」
仕事帰り、不定期に行くホルモン宅にて、勝手知ったるなんとやらでソファーで横になりながら昔話に花を咲かす。
「出会い無いわけじゃないでしょ。職場にだって男性はいるんだから?」
「岡田さん?」
「いや知らんけど」
「岡田さんいつも夜勤の一回目の巡回の時にお疲れ様つってオロナミンC持って私の事待ってんだよぅ!長身で優しくて元重役で、着てるものは毛玉とか全然ついてなくて凄く良いんだけどぉぉ!」
「うわ、入居者の方かよ、引くわ」
「私以外の女(職員)にも優しくしててぇ私だけじゃなかったのぉって!!その女(職員)旦那さんいますよぉってチクってんのに「僕がもう少し若かったら」なんてその女(職員)に話してたのぉぉぉ!!!」
「てか職員のプライベート話すなよ。怒られ案件だろそれ」
85歳の岡田さんが私の職場で一番良い男と思っている時点で、彼氏を作るという行為がどうやらご無沙汰というか、難易度下げて異性に好意を持つという技でさえ忘れてしまっている実態に、ホルモンに愚痴ってしまうが、どうしてもあの山から生還してきたホルモンの話しが私の中でインパクトランキングのトップ10に入るので、マッチングアプリを使って異性と会うことに抵抗を感じてしまう。
ちなみにホルモンは肉屋の祖母と祖父を人使って、その男を見つけ出したとか。
まだご生命かい。
つか人脈ネットワークどうなってんだ。