真名子さんの名(字)活
「ただいまぁ……ってまぁた真名子来てるのかよ」
「よっ!ホルモン家大黒柱!大黒柱のお帰りじゃ~!!」
ホルモンの旦那が帰宅してくるが、まぁ不定期に来てるとはいえホルモン宅に多い時は週4来てる私をいい加減ホルモン家族として迎え入れて欲しいし、なんなら養子になる準備も出来ている。
それか、もうこの際一夫多妻という制度をホルモン家だけに導入するのも有りなくらい、私はもうホルモン家に入り浸り過ぎてるが、旦那の許容範囲が広いのか特に怒られないし怒ってもいない。
「俺疲れてんだから早く帰れよ」
たまにくる旦那のアタック並のストレートな言葉を、先輩!私まだまだやれます!と膝ボロボロになりながらでも受け止めてホルモンとの会話に戻ろうとしたら、ホルモンが何その武器隠し持ってたの?課金!?課金なの!?と思うある言葉を発する。
「あ!でもテル君の会社でいつだか婚活のイベントあるって言ってなかった?」
「あるけど……えぇ?真名子参加させんの?俺今回そのイベントの役員になってるから責任取りたくねぇわぁ」
おい待て。何だその素敵なイベントは?婚活イベントヴァージンの私だが、親友の旦那がいるというちょっと贔屓出来そうな、なんなら裏工作出来そうなイベントは。
「もぉぉなぁぁによそぉぉんなイベント隠し持っててよぉ。まぁどうしてもって言うなら出てやってもいいけどぉぉ?」
「これだぞ?男出来ると思うか?」
「まぁいいんじゃない?」
あぁれだ!そうと決まればこれはちょっと美容室ってやつの出番じゃないですか?真名子立場上めっちゃ黒髪。うちの施設髪色自由だしなんなら佐藤くんちょっとした金髪。
うん、髪色自由つってるけどそこ考えればわかるべ?
自由つってるけど大人の諸事情でキラキラはあかんだろ佐藤くん。
もう何回言っても金髪。
どう言ってもこう言っても金髪。
生まれつきですってこの際言って頂きたい。注意する側の私の気持ちを考えて欲しい。
100歩譲って金髪でもキチンと仕事してくれたら、真名子リーダー何も言わないし、なんならお局職員達がちょっと佐藤くんに怒ってる所を「まぁ落ち着きな。」なんつって止めてあげたりなんかしたいけど。
ぜんっぜん仕事しねぇ。
しねぇんだこの金髪。なんならちょっとしたずる休み疑惑もある。熱で休みたいですの連絡くれた日、本山ちゃんがしまむらで見たって言ってた。
あぁもうあの金髪アウトだ。
ついでに本山ちゃんも、ボブとかそんなカタカナヘアじゃなくておかっぱ!もう、かなり長い昭和時代の初期頃に生息していた、少女のような髪型の本山ちゃん。
本山ちゃん、どうでもいいんですって近くの床屋に20年通ってるって言ってて、床屋の爺さん、ハサミ持つ手が震えてるって。
そこの爺さんの家族、うちの施設に入れたいって見学来てるんだぁ。
なんならもう店閉めてる筈なのに、あの青と赤と白のぐるぐる?勝手に外に出して店開けちゃうらしくて、本山ちゃんもそのぐるぐる出てる時に店行って切って貰うんだって。
完全に爺さんのファンの本山ちゃん。
かたや私はセミロングでカットだけで3500円のイケメン美容師に切って貰ってるのだが、イケメンの手が私に触れるだけで危うくおかわりつって髪の毛ショートヘアになりかけて、タイムタイム!ってレフェリーが体当たりして止めるみたいに持つハサミを避けたよね。
避けた時、私こんなに早く動けるんだって新たな自分を見つけたと同時に「危ないですよ~」ってイケメンにちょっと怒られて、またしてもおかわり……って言ってしまう所だった。