真名子さんの名(字)活
「いいか?この今回の婚活イベントはある企業の酒の試食会がメインで婚活はオマケだからな」
「うす」
「名前と年齢のみで職種も詳しく書いてない。年収なんて持っての他だ。ただ独身だけが条件で、酒を飲みながら楽しく会話をしましょうなソフトなものだ」
「うす」
「目立つな、はしゃぐな、とにかく真名子はニコニコしながら友達を作るくらいの感覚でいろ。一応最後にカップル成立するかなくらいの事はするが、サクラも入れてるから本気にするな」
「うす」
「変な行動したら直ぐ退室させるからな」
「もす!」
ドゴン!
妻の親友をえ?今ちょっと力加減間違えた?ってくらい本気で真名子の頭上にチョップしてきて、今は亡きプロレスラーの得意技、脳天唐竹割りをイベント前にくらう。
くらってる側なのにこっちがあっぽぅって声出ちゃってる。
ちなみに今日のイベントの土曜日。実は真名子、普通に出勤日。シフト制度なので1ヶ月の行動はもう限られている。
なのにそんな昨日の夜からドキドキして眠れなくなる遠足気分のイベントを、二週間前に言われた所で休めない。
あぁあぁオッケーオッケー出れる出れるぅって、休めば出れるぅっていう意味な訳で。
まぁ立場上ずる休み ダメ ゼッタイですが、イベント前日にちゃんと美容室を予約してイケメン美容師に「婚活なんですぅ」ってアピールしたら「そうなんですね!じゃあ思いっきり綺麗になっていきましょう!」ってイケメンの手が動く動く。
私けっこう常連だと思っていたけど、毎回似たり寄ったりな会話の内容しかされなくて、なんなら話しながらこの人新規だっけ?みたいな模索が凄い。
「お休みですか?」
「動物とか飼ってるんですか?」
「上手い飯屋さん知ってますか?」
絶対この言葉毎回言われる。私は動物を飼っていないけど飼えるなら犬が欲しいと何度も答えてる。
聞いてねぇ。絶対このイケメン聞いてねぇ。多分このイケメン、私の髪の毛しか見てねぇ。なんなら「まだ少し重いなぁ」「ちょっとまだ長いかな?」とか私の髪の毛と会話してる。
それがいつもの会話とはうって変わって今回は婚活という私パワーワードを持ってくる。
「フフ……。私にはこれがあるの。貴方の力はそんなものかしら?」
みたいなちょっとしたボス感出しながらぶっ込んでみたけど流石イケメン。婚活女子慣れてるのかな?なんなら婚活って実は初期の敵かな?くらいのレベルの低さだった?綺麗にしましょう!なんて言っといて
いつものセミロングの私に、
ぱっつん前髪作られてた。
OH……前髪。
ぱっつん前髪……。