【短編】天然お嬢様は焦らされてる事に気づかない。
それは私をプレッシャーとストレスで押しつぶすのに充分過ぎた。
けれど、私は一人ではなかったのだ。
入学してから数ヶ月後、定期テストが終わってすぐのこと。トップ専用の部屋ーー執務室で作業する私の前にある人が現れた。
「どうも。槙野颯斗です。今日からよろしくお願いします。」
槙野颯斗。彼は今の恋のお相手であり、この時期の私にとっての救世主だった。
この学園には沢山の特殊な伝統…というか規則があるのだが、トップに関係するもう一つ、トップの補佐がいる。
それは身分ではなく、成績で決められる。
そのため、毎年大体は一般枠の生徒が選ばれることが多い。
補佐を一年でも務めると今後の就職や出世に大きく影響し、有利になるため、年の始めの定期テストは競争率が高いらしい。
そして今年も、一般枠の生徒である槙野颯斗くんが補佐となるのだが、例年と違うのは彼が一年だということだ。
三学年同じテストを受けるため、一年が補佐になる事は不可能に近い。そのため彼は異例の事態となっている。
私としては有能な人が補佐を務めてくれるならとても嬉しい。
「貴方が私の補佐を務めてくれる槙野様ですね。ご存知だとは思いますが、私は西園寺璃子と申します。一年間、どうぞ宜しくお願い致しますね。」
私はいつものお嬢様言葉×微笑みで挨拶をした。生まれてきてから今まで鍛え上げたこの仕草には絶対的な自信がある。