友達以上恋人未満の片想い
芦屋は「そうか」と呟くと、教室を出ていこうとする。



「な、なあ」


「…なんだ?」


「あのさ、…友達ってなんだと思う?」


「…は?」



意味がわからないと眉をひそめる芦屋に、「あ、えっと…」ともごもごと話しながら続ける。



「友達以上にはなれてると思うんだよ、俺と小春ちゃん。好きな人の相談をしてくるってことは、信頼されてるってことだろ?まあ複雑でもあるけどさ」


「…ああ」


「でもそっから先が進展しないんだよ。女の子がどうしたら喜ぶとか、嬉しくなるとかわかるけどそれも全部小春ちゃんには通じなさそうだし、何よりも俺ができないんだ。情けないけど、いざ目の前にすると会話するので精一杯っていうか…」



まるで自分が恋愛初心者になったみたいだ。


今まで何人もの女の子に形だけの“好き”を伝えたり触ったりしていたのに、小春ちゃんにはそれが何もできない。



「小春ちゃんは俺のこと友達としか思ってないだろ。でも友達ってなんだよ。友達同士だけどキスはできるだろ?自慢じゃないけど友達の女の子と何回もしてきたよ。でも、小春ちゃんとはできない。友達なのに…」



恋人じゃなくたってキスでもなんでもやることはできる。


だから俺は別に小春ちゃんと友達のままでもいい。…それなのにどうして付き合いたいと欲が出てくるんだろう。



「おまえは馬鹿か?」
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