友達以上恋人未満の片想い



「…くん。…五十嵐くん」



ゆさゆさと肩を揺すられ、ハッと目が覚める。


選んでくれた小説を読み終わってから、真剣に読んでいる小春ちゃんを見ていたらいつの間にか眠っていたようだ。



「お店もう閉まる時間だって」



小春ちゃんが八時を指している時計を指差した。



「小春ちゃんが選んでくれた小説、面白かったよ」


「ほんと!?最後泣けたでしょ」


「うん、どんでん返しって感じだった」



小春ちゃんが嬉しそうにうんうんと頷いている。



「そういえば、どうして今日は急に連れてきてくれたの?」



電車に揺られながら窓の外を眺めていた小春ちゃんが、ふと思い出したように聞いてきた。



「あそこテレビで紹介されてるの見て、小春ちゃんが喜びそうだなーって思って。絶対連れて行ってあげたいと思ったんだ」



少しでも多く小春ちゃんを笑わせたかった。喜ばせたかった。


好きな人が笑ってくれるだけで俺はなんでも頑張れちゃうから。



「今度安堂も連れて二人で来なよ」
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