ロゼリア

プロローグ

他国との境にある辺境の地、マーレル。

帝国の公爵位にあるデュネール家が管理する領地の中でこの町は特に田舎で、お店も少ない事から若者達は帝都に憧れてこの町を出て行く。

しかし、若者達は帝都へ行って気がつく事だろう。

自然豊かなこの町の魅力に。

「お嬢様。失礼致します」

ノックの後に部屋の中へ入って来たのは、専属侍女のメイだった。

冬はもう通り過ぎたと思っていたのに、まだ少し冷たい風が私の頬を撫でる。

少し肌寒くなって私は窓を閉めると、メイの方へ視線を戻した。

「お嬢様へお手紙が届いております」

メイはそう言うと、一通の手紙を渡してきた。

「今回は随分と早いのね」

薔薇の封蝋を見て、私は誰から届いたのか直ぐに察した。

そもそも、田舎の領地に手紙を送ってくる人は限られている。

帝都で暮らすお父様かお兄様方のどちらかだけど、今回はお父様からのようだ。

手紙に目を通すと、そこに綴られてあった内容に私は思わずため息をついた。
< 1 / 10 >

この作品をシェア

pagetop