ロゼリア
「そうだ。地面に頭をつけ謝罪しなさい!」

彼女の言葉に見ていた周囲は、流石に『やり過ぎなのでは?』と騒がしくなった。

が、彼女の次の一言で周りは直ぐに口をつぐんだ。

「私は皇太子妃候補のステラ・レイディよ!この私の言う事に逆らうつもり!?」

なんとこの方が皇太子妃候補の一人、ステラ・レイディ様らしい。

(何て言うか…意外ね)

皇太子妃候補には、皇室にとって何かしらの利益があって選ばれる。

血筋だったり、その家系の影響力だったり。

レイディ家は宝石の採れる鉱山を所有していて、財力で言えば帝国の中でも屈指と言われている。

つまり、レイディ家が皇太子妃候補に選出されたのは、その財力を皇室が必要としているからなのかもしれない。

(…けど。皇太子妃候補である事を盾に、怒鳴り散らすのは違うと思うわ)

ここは間に入って止めたいけど、そんな事をすれば確実に目立ってしまうだろう。

変に注目が集まるのは避けたい。

さて、どうしたものかと考えていると、ステラ様の顔がみるみる真っ赤に変わった。

「私を馬鹿にしているのっ!?」

一向に土下座をしない姿を見て、馬鹿にされていると感じたらしい。

(どう見たって相手は怯えているだけなのに…)

こうゆう時は先生に頼るのが一番だと思い、職員室へ呼びに行こうとしたその時だった。

「下級貴族の分際でこの私を馬鹿にして…!!」

再びその場が騒がしくなり、視線を戻してみると、ステラ様が相手に向かって大きく手を振り上げていた。

(え、嘘でしょう!?)

こんなに人の目があるにも関わらず、皇太子妃候補である彼女が人に手を上げるなんて。

目を疑うような光景だったが、それよりも驚いたのは自分のとった行動だった。

パシッ。

「な…っ、何なの貴女は!私に逆らうつもり!?」

勢い良く振り落とされた手は、当たることなく私の手で阻止された。

まさか邪魔が入るとは思っていなかった彼女は、掴まれた手を振り払いながら警戒するように一歩後ろへ下がった。

…が、私の姿を見て下級貴族だと判断したのか、鋭い目つきでこちらを睨んできた。
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