ロゼリア
何をそんなに心配しているのか分からず首を傾げていると、それを見ていたお父様が口を開いた。

「今年はあの方以外にもロゼリアを含め、その候補者達が入学をする。目の届かない所で“また”何か起きたらとレオンは心配しているのだろう」

お父様の言うあの方とは、恐らく皇太子殿下のルーカス様の事だ。

私はその方の妃候補の一人らしく、小さい頃に数回会っただけでそれ以降は会っていない。

と言うのも、“あの事件”が起きてから私は表舞台に出なくなったので、自然と関わりが無くなったのだ。

「あの時は防ぎようがありませんでしたから…」

小さい頃。私は参加したお茶会で毒を盛られた事があった。

同じ派閥で同じ歳の女の子がいる貴族家のお茶会。

何とか一命を取り留めたが、幼い頃の私が社交界を怖がるには十分すぎる出来事だった。

「あの時はお茶を用意したメイドが処罰されたが、気をつけろよ。今年入学する生徒の中に候補者の一人、ライト侯爵家の娘がいる。あいつはその時の主催者であり、毒事件の後に候補者になった奴だ」

アレンお兄様はそう言って眉間にシワをよせた。

ライト侯爵家のミューラ様とは特別親しい仲では無かったが、毎回お茶会に呼んでくれる良い話し相手だった。

お兄様方は疑っているけれど、私はミューラ様がそんな事をする方とは思えない。

「あれから毒に慣れる訓練もしましたし、学園内は警備がしっかりしていると聞いています。きっと大丈夫でしょう」

どの道、私が妃に選ばれるとは思っていない。

社交界にも顔を出さない貴族令嬢なんてルーカス様は覚えていないだろうし、大人しく過ごしていれば何も起きないだろう。
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