ロゼリア

リア、友達ができる

翌朝。

早朝にも関わらず、門の前には私を見送ろうと使用人達まで集まっていた。

「ロゼリア。休みの日は帰ってくるんだよ」

「はい。お父様達も体調には気をつけて下さいね」

荷物を全て積み込むと、私はメイと一緒に質素な馬車に乗り込んだ。

アメリアル学園の学生寮は二つの棟に分かれており、一つは伯爵家を含めた上の家柄が暮らす上位棟。

そして、もう一つは子爵家や男爵家の子供が暮らす下級棟だ。

下級棟は学園まで徒歩十五分ほど掛かるそうで、上級棟と比べて待遇に差はあるけれど、部屋には既に必要最低限の家具が設置されてあるので、下級棟と言えどそれなりに環境は整っている。

「お嬢様。痛くはありませんでしょうか?」

「えぇ。ウィッグもいい感じだし完璧よ!メイ」

馬車に揺られている間、私はメイに変装の手伝いをしてもらっていた。

下で二つに結ばれたブラウンのウィッグ。

それにメガネをつければ、どこからどう見ても地味な女子生徒だ。

「午後から始まる入学式までだいぶ時間があるわね…」

必要なものは既に揃っていたので、引っ越しの整理が思ったより早く終わってしまった。

「そう言えば…お父様からパリス男爵家の設定が書いた紙をもらったわね」

学園生活の為に作った身分なので、うっかりボロを出して疑われないようにとお父様が用意してくれたのだ。

「パリス男爵家はデュネール公爵家の庇護下にある貴族って事にしてるみたいね」

確かにそれならパリス男爵家へ下手に手は出せないし、何かあった場合はデュネール公爵家が動く事が出来る。

「お父様もよく考えたものね」

まぁ、ロゼリアとして社交界での地位を確立するのなら変装せずに通った方が本当はいいのだけど、お父様の命令だから仕方ない。
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