ロゼリア
あの時、私は毒の影響で寝込んでいたので、あれ以降ミューラ様とは会っていない。

久しぶりに話してみようとも思ったけれど、今は身分と容姿を隠している身なので、そのまま建物の中へ入る事にした。

中にはクラス分けの紙が掲示板に貼られていた。

(えっと、私の名前は……あった!)

クラスは全部でC組まであり、私の名前はC組にあった。

(ミューラ様とルーカス様はA組ね。あと一人はどこかしら?)

最近、新たに皇太子妃候補に選出された伯爵令嬢。

私は皇太子妃の座に興味は無いが、候補と言うだけで周囲の注目を引き、また一時的に社交界で影響力を持つ。

厄介事に巻き込まれないように、把握したかったけど。

(名前はなんだったかしら?)

正直、その伯爵令嬢の名前は聞いた事がない。

レイディ伯爵家の長女であればお会いしたことはあるけれど、妹の方は今まで名前を聞いた事もないのだ。

(あ、名前を思い出せなくともレイディで探せばいいのだわ)

そう思いながら、視線をC組の張り紙へ移動したその時だった。

「貴女のせいでドレスが駄目になったじゃない!」

どこからか大きな怒鳴り声が聞こえてきた。

その人物を探すのは簡単で、周囲には人だかりが出来ていた。

「も、申し訳ありません…!」

気になって見てみると、派手なドレスに身を包んだピンク色の髪の女子生徒が、制服姿の女子生徒を睨みつけていた。

「貴女に踏まれたせいで、もうこのドレスは着られないわ!この日の為に新調したばかりだったのに、どうしてくれるのよ!!」

(ただドレスを踏まれただけよね?そんなに怒る事かしら?それよりも…)

問題は彼女の服装だ。

誰も口に出さないが、この学園では指定の制服の着用を義務付けている。

それは上級貴族であっても同じ事で、ドレスを着られるのは学園行事であるパーティーの時か休日の時だけだ。
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