手の届かない、桜の木の下の君へ
みどり先生がいなくなり、ひとりで布団のなかにこもる
どこかで考えていたことだけど、
いざ目の前に現実としてやってくるとこんなに混乱するんだと思う
親がいなくて、生まれたときからこの病院にいる、という背景があったから
私は今までこの病院にいられていることには気づいていたけど
いざ、外の世界に出ていきなさいと言われるとどうすればいいのかわからない
こうやって悩んだときはいつも中庭にいきたくなる。
病室をでて、いつもの道を歩く
忙しく働く看護師さんや楽しそうな子どもたちをみて離れたくないなと思う
だけど、すごく楽しかった外の世界に出たい
だけど不安
考え事をしながら階段を降りていると
ふわっと足が宙をまった
「あっ、」
「ことり!!」
「そう、くん?」
聞こえるはずのないそうくんの声を最後に、私の意識はなくなった