手の届かない、桜の木の下の君へ
病室に戻ると、みどり先生がぽつぽつと話しだした
「退院の話をいつしようか悩んでたタイミングで、ことりがそうがいるって言い出したから
背中を押すために出てきてくれたんだと思った。
2人のこと、忘れたままのほうが良いんじゃないかって思った時期もあったけど
今のことりなら受け止められると思って引き出しの鍵、渡した。
ことりに、ひなのことを伝えないって決めたときに
一緒に遊んでたおもちゃとか、アルバムを全部そこの引き出しに入れて、鍵はずっと僕が持ってた。
心のどこかで、楽しかった記憶を取り戻してほしいっておもってたのかもしれない」
「そっか・・・」
「心臓はもう、生活に大きな支障が出ないくらいにはよくなっていて
いつでも退院できるくらいに、
あとは心の、記憶の問題だった」
「行く場所がないから置いてくれてるんだと思ってた、」
「大きな理由は、記憶でさ・・記憶がない自覚がない状態だったから」
ひなと、そうが死んじゃったあとに急に良くなったんだよ、ことりの体」
「それは覚えてる、数値もよくなって手術できるようになった
手術のおかげで、すごくよくなった」
「うん・・」