手の届かない、桜の木の下の君へ

病室に戻ると担当の、青山 みどり先生が

心配そうな顔をして待っていた



「なんで先生?看護師さんだと思ってた、顔怖いよ」

「時間あったからねー」

「そっか」

「今日の検査、外泊には関係ないから。
 悪くても良くても許可は出すからね」

「何回も聞いてる、それ。
 関係ないのに検査のほうがやだけど」



そういって笑ったのにみどり先生は心配そうな顔を壊さない



「やっぱついていこうかな、外泊」

「またそれ?大丈夫だって、
 初めての一人外泊けっこう楽しみなんだから」



みどり先生が研修医としてこの病院に来て

初めて会った患者が私で

それが6才のとき

小さいときに担当してくれていたおじいちゃん先生から

みどり先生に担当が変わったのが

10歳のとき

前の先生も過保護だったけどみどり先生はもっとひどい。笑

何度も心配をかけてきたから心配する気持ちも分かるけど



「もう17だからね!」



目先の先生の心配事は私の外泊

高校生と呼ばれる年齢になってから初めてだから

今までは前のおじいちゃん先生と一緒に過ごしていたけど

今回は1人でホテルに泊まり、買い物なんかをする予定だ



「体調悪くなったら必ず連絡すること!」

「みみにたこできるってば、早く行こ!」
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