手の届かない、桜の木の下の君へ
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ここは長く入院している人たちのためにもすごく綺麗にお花や草木が整備されていて
この病院の名前の由来である大きな桜の木も中央に植えてある
桜の木のすぐそばにある小さなベンチに座って、本を読んだり考え事をするのが私の大切にしている時間
たまに桜の木を触ると膨大なエネルギーを分けてもらっているような気持ちになる
「青山、そう」
今日、ここに来ても思い出してしまうのはさっきであった男の子のこと
どこか人間じゃないような、穏やかすぎる雰囲気をもつ彼と話すのは
あんなに短くてもすごく楽しくて、思わず笑顔になってしまうような、心が落ち着く時間だった
30分くらいぼーっと過ごして、また病室に戻ると、中にはみどり先生がいる
「ねぇ、先生暇なの?最近よく来るね?」
「暇じゃないよ、体調どんな感じか見に来たの」
「もうすっかり元気〜」
「それはよかった」
念のため軽く診察をしてもらう
「大丈夫そうだね」
「よかったー、
あ、そうだ、先生」
「どうした?」
「青山そうくんって知ってる?」
私がそうくんの名前をいうとみどり先生はとてもおどろいた顔をした
「せんせ?」
「ごめんごめん・・そうくんな。なんで?」
「さっき会ったんだ。小児科に知らない子いたなんてびっくりだよ」
「あー、最近転院してきたから・・な」
「ふーん、」
「じゃあ、行くから。あんまり無理すんなよ」
「はーい、ありがと」