隣国王を本気にさせる方法~誘拐未遂4回目の王女は、他国執着王子から逃げ切ります~
07 従姉妹
コルティ公爵邸に着いたレティツィアは、従姉妹のレベッカに歓迎された。レベッカの母はレティツィアの父の妹で、かつての王女がコルティ公爵家に降嫁したのだ。
「わたくしのレティ! 今日も可愛いわー!」
レベッカはレティツィアの一つ年上で弟にラウルがいるのだが、昔から妹が欲しかったらしく、レティツィアは小さいころからレベッカに溺愛されていた。レベッカは妹と一緒にオシャレしたり、おしゃべりしたりしたかったらしい。いつもレティツィアの相談に親身になってくれる、良い姉的な存在である。
レベッカは少し鋭い瞳を持つ美人で、婚約者に名乗りを上げる男性が多い。すごくモテるのだ。
「うん、今日のドレスもレティを可愛く際立たせてるわ! 黒のリボンが良いわね」
「ありがとう、レベッカ」
レティツィアは嬉しくて微笑み、レベッカと隣同士でソファーに座った。まずは二人でお茶とお菓子を楽しむ。
レティツィアは小さい頃から「可愛い」と言われて育ったため、客観的に見てもレティツィアは自身が可愛い容貌なのだと理解していた。どんなドレスを着ても可愛いのだと、そう思い込んでいた。
ところが、衝撃的な物を見ることがあった。
小さい頃、母である王妃が開催したお茶会で、レティツィアと同年代か少し年上の令嬢達も母親に連れられ一緒にお茶をすることになった。その中に、レティツィアより少し年上の大変可愛らしい令嬢がいた。容貌が可愛らしく、ドレスも可愛い。けれど、なぜか変な生き物に見える、そんな矛盾した感想をレティツィアは持った。
同じお茶会にレベッカも参加していたのだが、レティツィアの感じた変な矛盾をレベッカに話した。そこでその矛盾が何だったのか、レティツィアは知った。
いくら可愛くても、フリルとリボンが多いコテコテでブリブリのドレスは、なんだか胸やけがする、ということだった。可愛い×可愛いは、上の兄たちが嫌いな甘すぎるお菓子と同じなのだと。
『人の振り見て我が振り直せ』とは言うが、レティツィアはあの令嬢のようになりたくない、そのように感じ、ブリブリすぎるドレスは着まい、そう誓った。
しかし、そうはいっても、レティツィアはストロベリーブロンドの髪色のせいなのか、可愛らしい容貌のせいなのか、全体的に濃すぎる色は似合わないのだ。レベッカのように大人に見えるドレスに憧れるが、レティツィアがそういったドレスを着ると、なぜか子供っぽさが際立ち、ちぐはぐ感が拭えない。
そこでレベッカに相談した。そこでできあがったドレス像は、白、水色、ピンク、ベージュ、薄緑、薄黄色といった淡い色をベースとしたドレスに、一部差し色として黒、紺、濃い緑などの濃いめの色のリボンやボタンやビジューを入れることにした。これが甘辛ドレスになり、レティツィアに大変似合う。
今日のレティツィアは、全体的に水色の花の刺繍が入った白の生地に、両肩に縦に細い黒のリボンが可愛いドレスを着ていた。髪飾りにも大きな黒リボンで合わせている。レベッカに褒められ、ニコニコが止まらないレティツィアである。
今日はレベッカがレティツィアとお揃いで作っていた、つばが広い帽子ができたというので見せてくれた。色違いだがデザインはお揃いである。レティツィアがさっそく帽子を装着して鏡を見た。
「わあ! 素敵! どうかしら、レベッカ」
「可愛いわよー! とっても似合ってる! 今のように髪を結んでなくても可愛いけれど、結んでも帽子は可愛く見えると思うわ」
「本当? あ、確かにレベッカも素敵! 今度、わたくしも髪を結んで帽子をしてみるわ」
髪をまとめているレベッカが帽子を装着しても、すごく似合っている。
それからレベッカとおしゃべりに花を咲かせる。
「そういえば、今度のお茶会、メルチ伯爵家のエミーリアも呼ぶのですってね。あの子、空気が読めないでしょう。呼ばないほうがいいのではない?」
「うーん、でも、前回招待したのは半年前ですもの。そろそろ招待しないと、変な風に絡まれるのも嫌だと思って……」
レティツィアは月に一度、複数の令嬢を招待してお茶会をしている。王立学園に通っていないため、少しでも同年代の令嬢と交流を図りたいのだ。レティツィアにも比較的仲が良く、性格の合う令嬢がいる。そういった令嬢たちをメインに数名、それに加え、それ以外にも人を入れ替えて数名令嬢を招待するのだ。メルチ伯爵家のエミーリアは、『入れ替え令嬢』リストの令嬢である。
エミーリアは、レベッカと同じ年で、王立学園の三年生。そして次兄ロメオの婚約者クラウディアの妹であった。エミーリアは、大変可愛らしい容姿だが、レベッカが言うに、『いろんな令息に媚びては、騙された令息の鼻の下を伸ばさせている』らしい。エミーリアは、どうやら女性に嫌われるタイプのようだ。
レベッカからそういった話は聞いていたが、実際にエミーリアに相対するまでレティツィアはそういう噂がある程度にしか思っていなかった。
「わたくしのレティ! 今日も可愛いわー!」
レベッカはレティツィアの一つ年上で弟にラウルがいるのだが、昔から妹が欲しかったらしく、レティツィアは小さいころからレベッカに溺愛されていた。レベッカは妹と一緒にオシャレしたり、おしゃべりしたりしたかったらしい。いつもレティツィアの相談に親身になってくれる、良い姉的な存在である。
レベッカは少し鋭い瞳を持つ美人で、婚約者に名乗りを上げる男性が多い。すごくモテるのだ。
「うん、今日のドレスもレティを可愛く際立たせてるわ! 黒のリボンが良いわね」
「ありがとう、レベッカ」
レティツィアは嬉しくて微笑み、レベッカと隣同士でソファーに座った。まずは二人でお茶とお菓子を楽しむ。
レティツィアは小さい頃から「可愛い」と言われて育ったため、客観的に見てもレティツィアは自身が可愛い容貌なのだと理解していた。どんなドレスを着ても可愛いのだと、そう思い込んでいた。
ところが、衝撃的な物を見ることがあった。
小さい頃、母である王妃が開催したお茶会で、レティツィアと同年代か少し年上の令嬢達も母親に連れられ一緒にお茶をすることになった。その中に、レティツィアより少し年上の大変可愛らしい令嬢がいた。容貌が可愛らしく、ドレスも可愛い。けれど、なぜか変な生き物に見える、そんな矛盾した感想をレティツィアは持った。
同じお茶会にレベッカも参加していたのだが、レティツィアの感じた変な矛盾をレベッカに話した。そこでその矛盾が何だったのか、レティツィアは知った。
いくら可愛くても、フリルとリボンが多いコテコテでブリブリのドレスは、なんだか胸やけがする、ということだった。可愛い×可愛いは、上の兄たちが嫌いな甘すぎるお菓子と同じなのだと。
『人の振り見て我が振り直せ』とは言うが、レティツィアはあの令嬢のようになりたくない、そのように感じ、ブリブリすぎるドレスは着まい、そう誓った。
しかし、そうはいっても、レティツィアはストロベリーブロンドの髪色のせいなのか、可愛らしい容貌のせいなのか、全体的に濃すぎる色は似合わないのだ。レベッカのように大人に見えるドレスに憧れるが、レティツィアがそういったドレスを着ると、なぜか子供っぽさが際立ち、ちぐはぐ感が拭えない。
そこでレベッカに相談した。そこでできあがったドレス像は、白、水色、ピンク、ベージュ、薄緑、薄黄色といった淡い色をベースとしたドレスに、一部差し色として黒、紺、濃い緑などの濃いめの色のリボンやボタンやビジューを入れることにした。これが甘辛ドレスになり、レティツィアに大変似合う。
今日のレティツィアは、全体的に水色の花の刺繍が入った白の生地に、両肩に縦に細い黒のリボンが可愛いドレスを着ていた。髪飾りにも大きな黒リボンで合わせている。レベッカに褒められ、ニコニコが止まらないレティツィアである。
今日はレベッカがレティツィアとお揃いで作っていた、つばが広い帽子ができたというので見せてくれた。色違いだがデザインはお揃いである。レティツィアがさっそく帽子を装着して鏡を見た。
「わあ! 素敵! どうかしら、レベッカ」
「可愛いわよー! とっても似合ってる! 今のように髪を結んでなくても可愛いけれど、結んでも帽子は可愛く見えると思うわ」
「本当? あ、確かにレベッカも素敵! 今度、わたくしも髪を結んで帽子をしてみるわ」
髪をまとめているレベッカが帽子を装着しても、すごく似合っている。
それからレベッカとおしゃべりに花を咲かせる。
「そういえば、今度のお茶会、メルチ伯爵家のエミーリアも呼ぶのですってね。あの子、空気が読めないでしょう。呼ばないほうがいいのではない?」
「うーん、でも、前回招待したのは半年前ですもの。そろそろ招待しないと、変な風に絡まれるのも嫌だと思って……」
レティツィアは月に一度、複数の令嬢を招待してお茶会をしている。王立学園に通っていないため、少しでも同年代の令嬢と交流を図りたいのだ。レティツィアにも比較的仲が良く、性格の合う令嬢がいる。そういった令嬢たちをメインに数名、それに加え、それ以外にも人を入れ替えて数名令嬢を招待するのだ。メルチ伯爵家のエミーリアは、『入れ替え令嬢』リストの令嬢である。
エミーリアは、レベッカと同じ年で、王立学園の三年生。そして次兄ロメオの婚約者クラウディアの妹であった。エミーリアは、大変可愛らしい容姿だが、レベッカが言うに、『いろんな令息に媚びては、騙された令息の鼻の下を伸ばさせている』らしい。エミーリアは、どうやら女性に嫌われるタイプのようだ。
レベッカからそういった話は聞いていたが、実際にエミーリアに相対するまでレティツィアはそういう噂がある程度にしか思っていなかった。