君の名に花束を
入試も終わり、一月も終わりに入った。この頃になるとニュースはバレンタインのチョコレートの話題でいっぱいになる。四葉たち三年生も例外ではなく、「友チョコはどうするか」「好きな人にあげるのか」という話がちらほらと上がるようになった。

（好きな人……）

友達と話している時、四葉の目は自然と圭吾の座る席に向けられた。圭吾は四葉に背を向け、読書を楽しんでいる。今読んでいるのは『特殊清掃人』だ。

（きっと真剣な顔して読んでいるんだろうな……）

そう思うだけで四葉の胸が高鳴る。二月に入れば三年生は学校に来ない。圭吾と会うことができなくなってしまう。さらに大学が違うため、卒業すれば疎遠になってしまう可能性もある。

（東郷くんに想いを伝えたい！）

四葉は圭吾にバレンタインの日、チョコレートを渡して告白をすることを決めた。告白をすると想像しただけで、心臓が止まってしまうのではないかと思うほど緊張が走る。しかし、後悔だけはしたくないという思いが勝った。
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