Magic Halloween

「あれ? ゆりかちゃんと透?」

大好きな声が聞こえでびくっと肩をふるわせる。
声の主を見ると、高斗が不思議そうな顔でこちらに近づいてきていた。

声もでないあたしに、隣の彼はそれはそれは楽しそうに意地の悪い笑みを浮かべていた。

なにか、嫌な予感が。

「高斗じゃん。お前、抜け出していいの?」
「あ、うん。まあ」
戸惑いながら首を傾げる高斗に、あたしはハッと現状に気付く。

もしや、今誤解されてる!?
いや、でもここでなにかいうのもおかしいし……。

どうしよ! どうしたらいい!?

「二人はなにしてんの?」
「ちょっとおしゃべりしてた。なっ、ゆりか」
さりげなく肩に手が回ってきて、彼の方に引き寄せられる。

だからあんたなれなれしい!

「あ、はい」
ゆっくりどけようとするけど、力が強すぎて離れず、二人で無言の攻防戦を繰り広げる。
「知り合いだったの?」
「さっき知り合ったの。ゆりか目立つじゃん」
そっか。とつぶやいて、高斗はあたしの隣に座った。

なにこの状況!!
好きな人が隣にいるのになんであたしは興味もないヤツに肩を抱かれてるんだ。

攻防戦の終止符を打ったのは、高斗の手だった。
高斗の手があたしの前を横切って、ヤツの手を掴んだのだ。
ヤツは怪訝そうに眉をあげたが、高斗は物怖じしなかった。

「透、ゆりかちゃん困ってるだろ。離してやれよ」
「えー。大抵の女の子は喜ぶのに」
あんなに離れなかったのに、高斗にいわれるとおちゃらけながら、簡単に離す。
誤解はされてないみたいで少しほっとした。

「それは透のこと好きな子限定だろ。ごめんね、ゆりかちゃん。悪い奴じゃないんだけど、女癖悪くて」
困ったように笑う高斗に、こくこくうなずくことしかできない。
「ひっでー高斗」
「事実だろ。俺が人相談もちかけられたか」
「彼女でもないのにいわれてもねえ」
「一人に絞ればいいのに。気あるふりばっかしてるから」
「……じゃ、ゆりかにしよっかなー」
突然話題をあたしにふられて、その場の時が一瞬止まる。
「困ります!」
我に返って、自分でも驚くほど冷たい口調ではっきりいえた。
その瞬間、ヤツが吹きだした。
「やっぱゆりか面白いわ」
「だからあたしは面白くないんですけど!」
そんなあたしたちのやりとりに高斗も苦笑していた。
「ほんとに彼女になる?」
「なりません! からかわないで!」
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