Magic Halloween
――――?
突然、照明が落ちた。
ゆっくり辺りを見渡すと、舞台の上だけにスポットライトがあたっている。
そのスポットライトに照らされているのは、マントを羽織って歯になにかつけた吸血鬼の格好をしている、よく知っている顔。
「さて今年もやってまいりました! 年に一度のハロウィンパーティー! みなさんのってますか!?」
いええええい!!
司会者の声につられるように盛り上がる熱気に圧倒される。
なんていうか、うん。ノリが違うわ。
「今年の司会は私! 受験真っ只中の三好高斗がお送りします! 以後お見知りおきを!」
いええええい!!
謎の掛け声がそこかしこであがっていたが、あたしはただ壇上の同級生を眺めていた。
小中高、全部一緒なんだから、当然知っている。
それにあたしは、あんたに会うために、今日来たんだから。
三好高斗は小学校からあんな感じだった。
お調子ものでみんなを引っ張るリーダー。
モテる、というよりは人気者で味方が多かった。
いつもクラスの中心で、盛り上げ役。
そんなヤツとあたしは、世間一般でいうところの幼なじみだった。
小学校まではわりと仲良かったし、家も近かったからよく遊んでいた。
その頃のあたしは今よりも明るくて活発だったし、なんにも考えてなかったから高斗と冗談言い合ったりして。
でもそれも、中学校の思春期に入るとなくなっていった。
あいつが引っ越して、クラスも同じじゃなくなって、接点がなくなったから。
それになりより、あたしが高斗を好きだって気付いたからだ。
好きだと気付くと、なにもできなかった。
話しかけることも出来ない、話しかけられても今までのように返せない、あたしはそんなイクジナシだった。
そして高斗もそんなあたしと少しずつ話さなくなって言った。
高校をここに選んだのも高斗がいるからなのに、一回もクラスは同じにならなかった。
同じクラスになっても話せたかは微妙だけどさ。
いつのまにこんなに遠い存在になったのかな。
昔のあの頃は、毎日泥だらけで笑いあって明日も遊べることが当たり前で。
まさかこんなに高斗と話すことができなくなるなんて思いもしなくて。
もう一度戻りたいわけじゃない。
でも。
少しでも声を聞けて、話せたら。
もう一度、笑いあえたら、もしかしたら昔みたいになれるかも。
なんて、高校の間、ずっとそう思ってた。
待ってるだけで行動もしないあたしに、そんな簡単に現状は変わるわけもなくて。
見るだけの生活にうんざりになってるくせに、変わる勇気もなくて。
だから今日。
ハロウィンのこの日に。
あたしは、一大決心をしたのだ。
“初対面のふりをして、話そう”
もう“あたし”としてではなくてもいい。
とりあえず高校の間に、高斗ともう一度話したい。
この恋を叶えたいなんて思わないし、叶わないのもわかってるから。
少しだけでいい。
笑って、話せたら。声が聞けたら。
あたしはそれだけで、充分なの。